論文紹介(山本・井上)
A comparison between wolves, Canis lupus, and dogs, Canis familiaris, in showing behaviour towards humans
「オオカミとイヌの、ヒトに対して見せる行動の比較」
Heberlein, M. T. E., Turner, D. C., Range, F., & Virányi, Z (2016). Animal Behaviour,122, 59-66
doi:10.1016/j.anbehav.2016.09.023
ヒトも、ヒトではない霊長類も、他個体からほしいものを要求するときに命令的な”>を使う。視線の行き来はこのような指示のジェスチャーに付随し、手がない自体を命令的な指示として機能させる。イヌは、ヒトとコミュニケーションをする点で特に優れた能力を持っている。コミュニケーション能力の素早い発達は、飼育によって容易にされてきたと考えられている。ヒトと社会適合化された大人のオオカミは、様々な状況下で、食べ物を見つけるためにヒトから供給された情報を使うことができる。しかし、目的物が届かないことを示すため、パートナー(ヒト)に視線の行き来を使うかは定かでない。私たちの実験では、二人のパートナーのうち一人に対して、届かない位置にある食べ物を知らせるか、オオカミとイヌに対してテストを行った。一人のパートナーは協力的な態度をとり、示された場所にあった隠された食べ物を与えた一方、もう一人のパートナーは競争的な態度をとり、食べ物を自身で食べてしまった。結果、オオカミはイヌと同様、パートナーに対して食べ物の場所を示すため「表出行動」を用い、競争的な人よりも協力的な人に対して合図を出した。このことから、両種とも協力的なパートナーに対してコミュニケーションを適合させることが分かる。私たちは両種とも、同じ条件下のグループに入れることで、協力するパートナーとしてヒトを使うことができ、手の届かないほしいものを得るため、命令的に指示すると結論付ける。ヒトと一緒に強化された社会生活は、オオカミにもイヌにも、ヒトと一緒に食べ物の場所について、協力的にコミュニケーションをとることを可能にさせる。とりわけ彼らの集団内で、社会的結束を促進するために進化した能力に頼って。(山本)
Infants’ use of movement synchrony to infer social affiliation in others
「乳児における他者の親和性を推測するための動作の同期性の使用」
Fawcett, C., & Tunçgenç, B (2017). Journal of Experimental Child Psychology, 160, 127-136.
https://doi.org/10.1016/j.jecp.2017.03.014
幼児は発達初期から他者と関わり合い、他者の社会的相互作用を観察する。親和的な社会的関係性を伝えたり構築したりするために重要であると判明している特性の1つには、身体的協調と動作の同期が挙げられる。本研究では、12カ月と15カ月の乳児を対象に、他者の動作における同期性が親和性の証拠となるかどうかを調べた。乳児は2体のぬいぐるみが真ん中にいる3体目のぬいぐるみの動作に同期するまたは同期しない場面を見た。続いて、真ん中のぬいぐるみは親和性を公表した後、2体のうち1体に近づき寄り添った。我々は注視時間を尺度として用い、寄り添いが起こる前に、乳児は真ん中のぬいぐるみがどちらのぬいぐるみに親和性を示すと推測するのかを判断した。その結果、12カ月児でなく15カ月児において、真ん中のぬいぐるみは寄り添いが起こる前に動作が同期した方のぬいぐるみに親和性を示すと推測しているということが判明した。これは彼らは動作の同期性に基づいて他者の親和性を推測することができるということを示唆している。結論は乳児の個人的な好みや社会的知識の発達における直接経験の潜在的な重要性の観点から議論される。(井上)
開講日 | 2018年07月25日 14:45~18:00 場所 | E304