Seminar

論文紹介(富所・高倉)

Jealousy in Dogs
「犬における嫉妬」
Harris, C.R., Prouvost, C. (2014).
 PLoS ONE 9(7): e94597. doi:10.1371/journal.pone.0094597

一般的に、嫉妬は人間に特有のものであると考えられているが、これは、この感情にしばしば関わる複雑な認知が原因である。しかし、機能的な観点からは、社会的な絆を侵入者から守るために進化した感情が、他の社会的種、特に犬のような認知的に洗練された種に存在する可能性があると予想されるかもしれない。本研究では、家庭犬の嫉妬を調べるために、ヒトの幼児研究のパラダイムを適用した。我々は、飼い主が、非社会的対象と比較して別の犬に思われるものに対して親愛なる行動を示したとき、犬はかなり嫉妬深い行動を示すことを発見した(e.g.噛みつき、飼い主と物体の間に入る、物体/飼い主を押したり触ったりする)。これらの結果は、嫉妬が、人間の幼児およびヒト以外の少なくとも1つの他の社会的種に存在するいくつかの「原始的な」形態を有するという仮説を支持する。(富所)

Are Eyes a Mirror of the Soul? What Eye Wrinkles Reveal about a Horse’s Emotional State
「目は心の鏡か。目の皺はウマの感情状態を表すのか」
Hintze, S., Smith, S,. Patt, A., Bachmann, I., & Wurbel, H. (2016).
 PLoS ONE 11(10): e0164017. doi:10.1371/journal.pone.0164017

感情状態を知るのに有効な指標を見つけることは、動物福祉科学における最大の課題の1つである。本研究では、ウマの眼盂の内皺の収縮に起因する目の皺の表現の変化が感情価を反映しているかどうかを調べた。我々は、ポジティブ条件とネガティブ条件を設定することで、ウマのポジティブあるいはネガティブな感情状態を誘発することを試みた。また、ポジティブな感情では皺の発現が減少し、ネガティブな感情ではしわの発現が増加すると仮定した。16頭のウマに、2つのポジティブ条件(グルーミング、食物予期)および2つのネガティブ条件(食物競合、ビニール袋を振る)を、順番のカウンターバランスをとって呈示した。各条件のトリートメントフェイズでは刺激を60秒間呈示した。ただし、その前に何も刺激を呈示しない60秒間のコントロールフェイズを設定した。両方のフェイズを通して、目の写真を撮影した。その中の写真から、各ウマについて、条件・フェイズごとに4枚の写真をランダムに選択した。条件やフェイズについて何も知らない実験者2名がランダムな順番で写真を6つの指標について評定した。6つの指標は質的な印象・まぶたの形状・皺の目立ちやすさ・白目の存在・皺の数・眼球の中心を通る線と最も高い位置にある皺との間の角度であった。その角度は、グルーミング条件においては、統制フェイズに比べて処置フェイズで減少し、食物競合条件では、統制フェイズに比べて処置フェイズで増加した。しかし、その他の食物予期条件とビニール袋を振る条件では、統制フェイズと処置フェイズの間に差は見られなかった。また、他の指標については条件・フェイズによる影響は検出されなかった。まとめると、我々は、目の皺の発現を確実に評価するための一連の措置を定義してきた。そのうちの1つの指標(角度)には、ウマが置かれた条件による影響が見られた。目の皺の発現における変化は、ウマの福祉に関する貴重な情報を提供するかもしれないが、今後、様々な条件を設定して特定の指標の妥当性を確認していくことが求められる。(高倉)

開講日 | 2017年10月11日 14:45~18:00 場所 | E304