Seminar

ゼミ紹介+論文紹介

ゼミ紹介(21名の3年生が見学)+論文紹介(田中)

Friendship affects gaze following in a tolerant species of macaque, Macaca nigra
(友情は寛容なマカク種(クロザル)の視線追従に影響する)
Micheletta, J. & Waller, B. (2012) Animal Behaviour, 83, 459-467.

視線追従とは他者の見ている方向を追う能力である。これにより個体は社会的・身体的環境からの有益な情報を得ることができる。人為的刺激を用いた最近の研究では、視線追従は社会的順位・社会的状況のような社会的要因によって調整されうることを示している。このことは視線追従の進化や機能をよりよく理解するための今後の認知研究において社会的要因を考慮することの重要さを示唆している。しかし、それが、動物が同種他個体の視線を追従するかを実験した場合にも当てはまるかは、まだわかっていない。さらに、視線追従に影響する社会的要因についてもまだ検討が不十分である。そこで本実験では、ライブ刺激として同種他個体を呈示することで、友情(例えば個体間の強いポジティブな絆)が寛容な霊長類であるクロザル(the crested macaque)において視線追従の反応を促進することを示した。被験体は友だち個体の視線をそうでない個体に比べてより頻繁に追うということはなかった。しかし、友情指数の高い2個体間では、被験体は視線によりすばやく反応した。クロザルの社会的関係における高い社会的寛容性は社会的順位や血縁関係によって与えられた制約を減少させるのかもしれない。それゆえ、その高い社会的寛容性は社会的認知能力が友だち個体間でよりよく用いられることを可能にしたのかもしれない。先行研究の結果と合わせて考えると、本研究の結果は、霊長類の認知を形成する際の関係性の質や種の社会性の重要さを示唆している。(田中)

開講日 | 2016年04月13日 14:45-18:00 場所 | E304