Seminar

論文紹介(中村)

M2の中村さんが論文紹介をしました。

The left cradling bias: An evolutionary facilitator of social cognition.
左抱っこバイアス:社会的認知の進化的促進要因?
Forrester, G. S., Davis, R., Mareschal, D., Malatesta, G., & Todd, B. K. (2019). Cortex: A Journal Devoted to the Study of the Nervous System and Behavior, 118, 116–131. 
 
要旨
ヒトにおける強固な左抱っこバイアス(LCB)は、進化的に古い左視野バイアスと、社会的刺激を処理するための右脳優位性を反映していると論じられている。LCBを介して誘発される顔処理における左視野バイアスは、社会的刺激を処理するためのヒト集団レベルの右脳の特異性を反映していることが知られている。我々は、ゆりかご側方バイアス、利き手、社会的コミュニケーション能力との関連を検討した。4歳および5歳の定型発達児(N = 98)は、幼児ヒト人形、幼児霊長類人形、原始的顔面枕、無顔面枕からなるゆりかご試行を挟んだ一連の手指運動課題に参加した。社会性とコミュニケーション能力の平均点は、各児童の担任教師が記入した調査によって得られた。その結果、利き手、性別、年齢、弟妹の有無には影響されない、幼児ヒト人形の抱っこに関する集団レベルのLCBが見出された。しかし、LCBを示す子どもは、右側に抱く子どもと比較して、社会的能力の平均点が有意に高かった。幼児ヒト人形と同様に、原始顔枕の図式化された顔シンボルは、集団レベルのLCBを誘発するのに十分であった。対照的に、幼児霊長類人形は、利き手と性別の両方に影響された集団レベルの右抱っこバイアスを誘発した。この結果は、LCBが発達の初期に存在し、目に見えることから、進化的に古い右大脳半球の領域特異的な組織と機能を表している可能性が高いことを示唆している。さらに、LCBは最小限のトリガーしか必要としないが、状況によっては逆転する可能性があることが示唆された。社会的刺激の文脈における行動バイアスのパターンと認知能力との関連は、発達中の子どもにおいて社会的コミュニケーション能力がどのように出現するかを理解する上で重要である。(中村)

開講日 | 2024年07月10日 13:00ー15:00 場所 | E304