Seminar

論文紹介+研究計画相談(米村)

修士2年の米村さんが論文紹介と研究計画の相談をしました。

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Domestication does not explain the presence of inequity aversion in dogs.
(家畜化はイヌの不公平感の存在を説明しない)
Essler. J. L., Marshall-Pescini. S., & Range. F. (2017) Current Biology, 27, 1861-1865. 

DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2017.05.061

Abstract:

不公平に対する感受性は、好ましくない協力相手を認識するための重要なメカニズムであり、その結果、ヒトの協力の進化に極めて重要であると考えられている。この関係はヒトに限ったことではなく、協力的な非ヒト霊長類も不平等な結果に反応するのに対し、非協力的な種は反応しないことから、この仮説が成り立つ。この仮説は霊長類以外では検証されていないが、ペットのイヌは報酬の不公平には反応するが、質の不公平には反応しないという限定的な不公平嫌悪を示すことが研究で明らかにされている。このような原始的な不公平感回避は家畜化の過程で選択され、その祖先であるオオカミにはなかったという説が有力である。あるいは、狩りをし、子供を育て、協力して縄張りを守るオオカミは、ヒト以外の霊長類と同様に、あるいは少なくともペットのイヌと同程度に、不公平を嫌うということである。群れで生活するイヌとオオカミを同じように飼育し、テストしたところ、パートナーが報酬をもらっているのに、自分が報酬をもらっていない場合、どちらも不公平感を嫌がることがわかった。また、オオカミもイヌも、パートナーより質の低い報酬を受け取ると反応した。これらの結果から、群れで生活するイヌやオオカミの不公平反応は、ヒト以外の霊長類で観察される不公平反応と同等であることが示唆された(ペットのイヌに関する研究では、ヒトとの関係により結果が混乱する可能性がある)。つまり、オオカミとイヌの共通の祖先(おそらく協力的な祖先)には、すでに不公平嫌悪が存在していたことが示唆され、協力と不公平嫌悪の密接な関連という仮説が支持された。(米村)

開講日 | 2022年06月29日 13:30~16:00 場所 | E304