Seminar

論文紹介(若生・和田)

学部3年の若生さんと修士1年の和田が論文紹介をしました。

 

Social management in captive great apes: An overview of current practice and related studies.

「大型類人猿の社会性に配慮した飼育管理:実践と研究の視点から」

Yamanishi, Y., & Sakuraba, Y. (2019).  Japanese Journal of Animal Psychology, 69-1.  https://doi.org/10.2502/janip.69.1.8

動物の社会性に関する知識の蓄積に伴い、社会的エンリッチメントは飼育動物管理の最も重要な側面の1つと考えられている。基礎的な知識は蓄積されていても、社会性は複雑な問題を含んでいる。さらに、社会管理のための実用的な方法論については議論の余地がある。本総説では、社会性に関する議論を進展させるため、日本の動物園で飼育されている4種の大型類人猿(チンパンジー、ニシゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータン)に対する社会管理の現在の研究と実践を概観する。私たちはまず、動物の社会性の基礎について説明する。次に、私たちは、飼育下の動物の社会的関係、チンパンジーとゴリラのオスグループの形成、オランウータンの群れ生活、障がい者や高齢者の福祉といった社会性に関する重要なテーマを探求する。近年、社会性に関する研究は増えているが、飼育下の社会生活におけるポジティブな効果を最大限引き出すためには、科学的方法論を利用して、社会要因が動物にもたらす影響をより詳細に理解することが重要である。(若生)

 

Horses are sensitive to baby talk: pet-directed speech facilitates communication with humans in a pointing task and during grooming

「ウマは赤ちゃんことばに敏感:ペットに向けた話し方は指示課題と毛づくろいの際にヒトとのコミュニケーションを円滑にする」

Lansade, L., Trösch, M., Parias, C., Blanchard, A., Gorosurreta, E., & Calandreau, L. (2021).  Animal Cognition, 1-8.  https://doi.org/10.1007/s10071-021-01487-3

ペットに向けた話し方 (PDS) は、ヒトが伴侶動物に対して自発的に用いる話し方である。これは赤ちゃんに対して一般的に用いられる話し方に非常に類似している。ソーシャルメディアでの調査から、回答者の92.7%が自分のウマにたいしてPDSを用いていると回答しているが、ウマがPDSに対して敏感であると考えている回答者は44.4%にとどまり、それ以外の回答者はわからない、または敏感ではないと考えていることが示されている。そこで本研究では、2つの課題におけるPDSの効果を検討した。実験者が手でウマを掻く毛づくろい課題では、大人に向けた話し方 (ADS) よりも PDS で話しかけられたときに、参加個体 (n = 20) は実験者に対してより相互グルーミング動作を示し、実験者を見て、移動が少なかった。実験者が報酬の場所を指さす指差し課題では、PDSで話しかけられた参加個体 (n = 10) はチャンスレベルよりも有意に多く報酬を獲得したが、これはADSで話しかけられた参加個体 (n = 10) ではみられなかった。これらの結果は、特定のヒト以外の霊長類やイヌと同様、ウマがPDSに対して敏感であることを示唆した。PDSは日常の関わり合いにおいて、ヒトとウマとのコミュニケーションを促進するだろう。(和田)

開講日 | 2021年07月14日 13:00 ~ 16:00 場所 | E304