Q. 当講座の研究の特徴について教えてください。

 社会行動の異分野間融合拠点として 

当講座の研究活動の最大の特徴は、社会行動に関する先端研究分野間の交流と融合を目指している点です。

現在、人間と社会の関係をめぐる旧来の研究分野間の垣根が崩れ、新たな理論的・方法論的融合が急速に展開しつつあります。
当講座は、こうした流れに先立ち、1980年代からすでにこうした動きを先導してきました。現在もその精神を受け継ぎ、社会心理学者を始め、行動・神経経済学者、脳神経科学者、動物行動学者など、様々な分野出身の研究者が集まり、多くの分野に対して影響力のある研究成果を生み出しています。また、後に詳しく説明するように、大学院生の出身分野も様々です。

当講座では、毎週1回のペースで開催されている大学院共通セミナーを始めとして、大学院生が、自分とは異なる専門分野の教員や学生からコメントを受けたりディスカッションしたりする機会がもたれています。また、様々な学問分野の研究者を招待して話題提供と議論を行うワークショップが頻繁に開催されるなど、大学院生に幅広い学びとネットワーキングの機会が提供されています。

当講座のミッションは、以上のような試みを通じて、既存の研究分野の枠に囚われない新たな知識を生み出し、また活用していくことのできる人材を育成することです。

Q. 当講座の大学院教育の特徴について教えて下さい。

当講座の大学院教育の特徴は、大学院生と教員がプロジェクトチームを組み共同研究を進める中で、新たな知識を生み出すための思考法と検証法、そして論文執筆やプレゼンテーションの技術などを身につけていくことです。

わたしたちがこうした教育方針を採用している背景には、当講座の教員たちが共有しているある信念があります。それは、研究分野全体にインパクトを持つ研究を生み出すためには、そこで要求される「考え方」や「動き方」の基本を学ぶことが不可欠であり、それなしには、大学院生の潜在的な能力や個性を伸ばすことは不可能であるとの考えがあります。特に研究者としてのスタートアップとしての修士課程においては、それぞれの分野で先端研究を行ってきた教員の指導の下で、研究の「技術」と「作法」をしっかりと学んでもらうことを重視しています。大学院修了後は、こうして獲得した高い能力と強力な個性を基礎としながら、各自が目指す研究や実務の世界に旅立っていただくことになります。

Q. 教育・研究のための設備について教えてください。

大学院生の能力を育成するために、当講座では充実した学習・研究環境を提供しています。特に大学院生の個人研究スペース、また実験設備については、国内的に希有なレベルのものを擁しています。
見学希望の方は、こちら  から事前にご予約の上、ぜひお越し下さい。

1) 学習や研究のためのスペース

当講座では、研究スペースをふんだんに設け、学生が腰を落ち着けて研究に没頭できる環境を提供しています。大学院生には、一人一区画ずつの個人研究スペースが割り当てられているほか、学部生も利用可能な研究スペース、また研究ディスカッションを主な目的とした広い空間も設けられています。

2) 実験室

当講座における実験の多くは、北海道大学社会科学実験研究センター内に設置された3つの実験室(「国際ネットワーク実験室」「集団実験室」「感覚システム実験室」)、また同センターと北海道大学医歯学総合研究棟中央研究部門が共同で運用しているMRI室で行われています。

国際ネットワーク実験室

集団実験室

fMRI装置(Siemens MAGNETOM Prisma)

当講座は、日本国内において最も精力的に社会科学の実験研究が行われている研究拠点の一つです。実験室の年間稼働日数は約200日、年間実験参加者数は約2,800名(平成24-26年度平均)にのぼります。

3) 実験参加者

実験参加者の効率的な募集体制が整っているのも、当講座の特長です。北海道大学社会科学実験研究センターと協力して、年間約1,600名の北海道大学の学部生の皆様に実験参加者登録をいただき、のべ約2,800名が参加しています(平成24-26年度平均)。

Q. 大学院生はどのような学術論文を書くことになりますか?

北海道大学大学院文学院では、修士課程修了のための要件として修士論文を、博士後期課程では、途中二度にわたる報告書の提出・審査を経て、最終的に課程博士論文を提出し、審査に合格することを求めています。

当講座ではまた、大学院生が、国内外の学術誌で学術論文を公刊することを強く推奨し、積極的に指導しています。多くの先輩たちが、国内外の第一線の学術誌に論文を掲載しています。こうして発表された研究成果は、しばしば海外の研究者からの問い合わせを受けたり、国内外の研究書や教科書などで引用・紹介されたりしています。

大学院生を第一著者にした学術論文の例

  • Hashimoto, H., Li, Y., & Yamagishi, T. (2011). Beliefs and Preferences in Cultural Game Players and Cultural Agents. Asian Journal of Social Psychology, 14(2), 140-147.
  • Han, R. & Takahashi, T (2012). Psychophysics of time perception and valuation in temporal discounting of gain and loss. Physica A, 391(24), 6568-6576
  • Toyokawa, W., Kim, H.R., & Kameda, T. (2014). Human collective intelligence under dual exploration-exploitation dilemmas. PLoS ONE, 9(4), e95789.
  • 北梶陽子・大沼進 (2014). 社会的ジレンマ状況で非協力をもたらす監視罰則 : ゲーミングでの例証. 心理学研究, 85(1), 9-19. (日本心理学会優秀論文賞)
  • 山田順子・鬼頭美江・結城雅樹 (2015). 友人・恋愛関係における関係流動性と親密性-日加比較による検討-. 実験社会心理学研究, 55(1), 18-27.(日本グループダイナミックス学会優秀論文賞)
Q. 大学院修了後の進路について教えて下さい。

修士課程修了者の進路は様々です。大きく分けると、博士後期課程に進学する人と、民間企業や研究所、行政機関などに就職する人がいます。

博士後期課程修了者の多くは国内外の大学や研究機関などの研究職に就きます。海外の大学に職を得る修了者が多いのも、国際的な研究展開を強力に推奨している当講座の特徴の一つと言えます。

民間企業や研究所・行政機関などへの就職の際には、大学院で身につけた専門知識や技能がしばしばアピールポイントになります。たとえば、人の社会行動や意思決定のメカニズム、心と社会の相互影響関係に関する理論的視点、また統計解析やコンピュータプログラミングに関する知識と技能、などです。

大学への就職例(准教授・助教・ポスドクなど)

 国内 

北海道大学、、北海道医療大学、東京大学、東京学芸大学、明治学院大学、政策研究大学院大学、上智大学、青山学院大学、玉川大学、淑徳大学、大正大学、信州大学長野大学、名古屋大学、三重大学、京都大学、奈良大学、大阪大学、関西大学、神戸大学、広島修道大学、高知工科大学、熊本学園大学 その他多数

海外 

アルバータ大学(カナダ)、ティルバーグ大学(オランダ)、マックスプランク研究所(ドイツ)、ミシガン大学(アメリカ)、ウィリアム・アンド・メアリー大学(アメリカ)、ヨーク大学(イギリス)、セント・アンドリューズ大学(スコットランド)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ) その他多数

民間企業・研究所への就職例

(株)インテージ、NTTコミュニケーション科学研究所、国立情報学研究所、社会調査研究所、電力中央研究所、東急総合研究所、(株)マクロミル、(株)リクルートエージェント、(株)リクルート、日本ユニシス(株)、NECネッツエスアイ(株)、富士フイルム(株)、日本ロレアル(株)等

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