当講座の研究活動の最大の特徴は、社会行動に関する先端研究分野間の交流と融合を目指している点です。
現在、人間と社会の関係をめぐる旧来の研究分野間の垣根が崩れ、新たな理論的・方法論的融合が急速に展開しつつあります。
当講座は、こうした流れに先立ち、1980年代からすでにこうした動きを先導してきました。現在もその精神を受け継ぎ、社会心理学者を始め、行動・神経経済学者、脳神経科学者、動物行動学者など、様々な分野出身の研究者が集まり、多くの分野に対して影響力のある研究成果を生み出しています。また、後に詳しく説明するように、大学院生の出身分野も様々です。
当講座では、毎週1回のペースで開催されている大学院共通セミナーを始めとして、大学院生が、自分とは異なる専門分野の教員や学生からコメントを受けたりディスカッションしたりする機会がもたれています。また、様々な学問分野の研究者を招待して話題提供と議論を行うワークショップが頻繁に開催されるなど、大学院生に幅広い学びとネットワーキングの機会が提供されています。
当講座のミッションは、以上のような試みを通じて、既存の研究分野の枠に囚われない新たな知識を生み出し、また活用していくことのできる人材を育成することです。
わたしたちがこうした教育方針を採用している背景には、当講座の教員たちが共有しているある信念があります。それは、研究分野全体にインパクトを持つ研究を生み出すためには、そこで要求される「考え方」や「動き方」の基本を学ぶことが不可欠であり、それなしには、大学院生の潜在的な能力や個性を伸ばすことは不可能であるとの考えがあります。特に研究者としてのスタートアップとしての修士課程においては、それぞれの分野で先端研究を行ってきた教員の指導の下で、研究の「技術」と「作法」をしっかりと学んでもらうことを重視しています。大学院修了後は、こうして獲得した高い能力と強力な個性を基礎としながら、各自が目指す研究や実務の世界に旅立っていただくことになります。
見学希望の方は、こちら から事前にご予約の上、ぜひお越し下さい。

国際ネットワーク実験室
集団実験室
fMRI装置(Siemens MAGNETOM Prisma)
当講座は、日本国内において最も精力的に社会科学の実験研究が行われている研究拠点の一つです。実験室の年間稼働日数は約200日、年間実験参加者数は約2,800名(平成24-26年度平均)にのぼります。
当講座ではまた、大学院生が、国内外の学術誌で学術論文を公刊することを強く推奨し、積極的に指導しています。多くの先輩たちが、国内外の第一線の学術誌に論文を掲載しています。こうして発表された研究成果は、しばしば海外の研究者からの問い合わせを受けたり、国内外の研究書や教科書などで引用・紹介されたりしています。
● Han, R. & Takahashi, T (2012). Psychophysics of time perception and valuation in temporal discounting of gain and loss. Physica A, 391(24), 6568-6576
● Toyokawa, W., Kim, H.R., & Kameda, T. (2014). Human collective intelligence under dual exploration-exploitation dilemmas. PLoS ONE, 9(4), e95789.
● 北梶陽子・大沼進 (2014). 社会的ジレンマ状況で非協力をもたらす監視罰則 : ゲーミングでの例証. 心理学研究, 85(1), 9-19. (日本心理学会優秀論文賞)
● 山田順子・鬼頭美江・結城雅樹 (2015). 友人・恋愛関係における関係流動性と親密性-日加比較による検討-. 実験社会心理学研究, 55(1), 18-27.(日本グループダイナミックス学会優秀論文賞)
博士後期課程修了者の多くは国内外の大学や研究機関などの研究職に就きます。海外の大学に職を得る修了者が多いのも、国際的な研究展開を強力に推奨している当講座の特徴の一つと言えます。
民間企業や研究所・行政機関などへの就職の際には、大学院で身につけた専門知識や技能がしばしばアピールポイントになります。たとえば、人の社会行動や意思決定のメカニズム、心と社会の相互影響関係に関する理論的視点、また統計解析やコンピュータプログラミングに関する知識と技能、などです。
北海道大学、、北海道医療大学、東京大学、東京学芸大学、明治学院大学、政策研究大学院大学、上智大学、青山学院大学、玉川大学、淑徳大学、大正大学、信州大学長野大学、名古屋大学、三重大学、京都大学、奈良大学、大阪大学、関西大学、神戸大学、広島修道大学、高知工科大学、熊本学園大学 その他多数
海外アルバータ大学(カナダ)、ティルバーグ大学(オランダ)、マックスプランク研究所(ドイツ)、ミシガン大学(アメリカ)、ウィリアム・アンド・メアリー大学(アメリカ)、ヨーク大学(イギリス)、セント・アンドリューズ大学(スコットランド)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ) その他多数
※入試日程・願書・過去問などを含む北海道大学文学院の入試情報はこちら
こうした大学院生の出身分野の多様性は、私たちの講座にとってむしろ幸運なことです。様々な学問的バックグラウンドを持つ大学院生が集うことにより、多様な視点からの議論が可能となっています。
まず、広く利用されている奨学金制度として、日本学生支援機構による奨学金があります。平成27年度の第一種奨学金では、修士課程は月額5万円または8万8千円、博士課程では月額8万円または12万2千円が支給されます。このほか、北大独自の北海道大学フロンティア奨学金など、様々な奨学金への応募のチャンスがあります。学費や経済支援についての情報は文学研究院・文学院・文学部ホームページ の情報をご覧下さい。
文学研究院からは、研究や学部生の教育に関わる様々な業務が提供されており、大学院生を経済的に支えると共に、教育や研究に携わる機会が提供されています。例えば、教員による学部向け授業をサポートする ティーチングアシスタント(TA) 、より多くのイニシアティブを任せられて授業を展開する ティーチングフェロー(TF) 、研究活動を通じて研究院に貢献する リサーチアシスタント(RA) などがあります。
博士後期課程の学生には、日本学術振興会特別研究員 に応募する機会が与えられます。業績とポテンシャルの評価に基づく選考の後これに選ばれれば、博士後期課程在学中には年間約240万円、修了後には約430万円の奨学金が支給されるとともに、自らの研究プロジェクトを進めていく上での研究費もサポートされます。当講座では、平成17年から平成27年までの10年間で32名の大学院生が特別研究員(DCおよびPD)に選ばれています。この数字は、国内の社会心理学領域では突出した数字であり、当講座の大学院生の実力が広く認められている証拠の一つでもあります。
広いキャンパスですが、構内の至る所に大学生協 の売店や学食があり、書籍や文房具、日々の食事など、研究生活に必要な物資のほとんどをまかなうことができます。また、キャンパス内にはホテル直営のレストラン も出店しています。
街の中心部に近いため、オフの時間には快適な都市生活を楽しむこともできます。JR札幌駅や大通公園周辺には百貨店や専門店、レストランやカフェなどがあります。キャンパス周辺には学生街が広がり、多くの学生がマンションやアパートや学生寮などに暮らしています。週末の夜には大学院生たちが街に繰り出し、居酒屋やカフェなどで遅くまで語らい合うなどしています。
参照:キャンパス情報
札幌は、充実した食文化でも全国的に有名です。新鮮な海と山の幸、学生に人気のラーメンやスープカレー、そして近年全国的に有名になりつつあるスイーツなど、新たな食の激戦区となっています。
大学院生にとって、札幌に住むことの利点の一つは、家賃や物価の安さでしょう。大学周辺のワンルームマンションの場合、約3~5万円で十分なクオリティのものを借りることが出来ます。食費も安く抑えることが出来ます。
札幌は、日本各地からの交通の便が非常によいことも特徴です。例えば羽田空港(東京)から新千歳空港(札幌)までは、1日当たり50往復以上の定期便が運航されており、片道の所要時間は約1時間半です。名古屋からは約1時間40分、大阪からは約2時間です。近年はLCCの就航により、以前よりもかなり安価に旅行することが可能になりました。
北海道の冬の寒さや雪が心配だという方もいらっしゃるかもしれません。しかし北海道の建物は、強力な暖房設備や耐寒壁など、冬の気候に適した造りになっており、冬の屋内はむしろ本州の家屋よりもずっと温かく、むしろ過ごしやすいと評判です。
当研究室出身のThomson氏が撮影した札幌市の風景