1. HOME
  2. ブログ
  3. 2022
  4. 数理モデルによる社会現象の記述の方法

ワークショップ

2022

数理モデルによる社会現象の記述の方法

日時:2022年12月12日(月) 13:00~14:00
場所:文学研究院E棟E304室(Zoomとのハイブリッド開催)

タイトル:数理モデルによる社会現象の記述の方法

スピーカー: 板尾健司(東京大学総合文化研究科、マックスプランク進化人類学研究所)

概要:
数理モデルによる推論は、今や自然科学や経済学などに留まらず、人文学及び社会科学においても一般的な方法である。これまでに様々な分野において多くのモデルが提案され、現象の説明に当てられてきているが、一方で目の前にある現象からいかにモデルを構築するかという方法論が確立しているとは言い難い。そこで、本講演では数理モデルにより現象を記述するとはどういうことかを問うことから出発して、モデル構築者が現象を記述するときの問題意識に忠実なモデルが「良い」モデルであるための必要条件であることを述べる。次いで、基本的な問題意識の軸として抽象性、階層性、作用する力の種類という観点を導入し、主に文化進化分野におけるモデル研究の例を紹介しつつ、問題意識に応じてモデルの形式がある程度決定されることを示す。また数理モデルのシミュレーションによって得られる結果があくまで思考実験の産物であることに留意して、そこで得られた知見が現象の記述において意味を持つためには論理的一貫性、成立条件に関する安定性、経験的妥当性が必要であることを述べる。後半では、前半で述べる数理モデル構築のための方法論の適用例として発表者の研究を紹介する。そこでは、多くの伝統的な小規模社会において観察される、文化的同胞集団内での婚姻を禁じ、他集団の成員を選好する規則の進化を数理モデルで議論する。婚姻が、家族をなすことで同胞意識を育むこと、義理の親族の連帯とライバルの競争をもたらすことを数理的に表現すると、人々の相互作用から自発的に、これまで世界各地で観察された多様な親族構造に対応するものが生まれることを示す。