「フューチャー・デザイン」
日時:2018年3月30日(金)10:00-12:00
場所:北海道大学文学研究科 E304教室
参加者:竹澤正哲、結城雅樹、大沼 進、高橋伸幸、瀧本彩加、他7名(計12名)
スピーカー:西條 辰義 教授(総合地球環境学研究所・高知工科大学フューチャー・デザイン研究所)
タイトル:「フューチャー・デザイン」
アブストラクト:Rockstrom et al. (Nature, 2009)のプラネタリ・バウンダリの研究は,産業革命以降の自然科学の評価とみなすことができる.生物多様性や窒素やリンの循環はすでにティッピングポイント(元に戻ることのできない境界点)を超えてしまい,気候変動などにも黄信号がともっている.
次に,各国における「豊かさ」を示す人間開発指数(HDI)と持続可能性を示す一人当たりのエコロジカル・フットプリント(EFP)の関係を見よう.途上国はHDIもEFPも低く,先進国は両者ともに高い.目標とすべきは,低いEFPと高いHDIであるが,その方向に向かっている国は皆無である.この関係は,いわば社会科学的な評価であり,プラネタリ・バウンダリの評価と合わせると,我々は我々自身の存続を脅かしていると言わざるを得ない.
一方で,日本を含む主要諸国の債務残高は巨額である.将来世代の資源を奪うことで現世代の豊かさを維持しているのである.日本の場合,債務残高の解消のためには,消費税を30%に上げ,これを百年続けることで残高が解消可能になるようである.果たしてどの世代が進んでこれを実行するのだろうか.
このような世代を超えた持続性に関する政策課題を解決し,将来世代に持続可能な自然環境と人間社会を引き継いでいくために,どのような社会制度をデザインすべきか.この問いを追求するのが,「フューチャー・デザイン」という研究の動きであり,2012年に大阪大学の研究者たちを中心に始まり,環境学,経済学,心理学,倫理学,哲学,生物学,工学,神経科学などの研究者,自治体や省庁の職員と共に,理論構築,ラボ実験やフィールド実験,さらにはそれらを元に実践がなされている.
本報告で「仮想将来人」を含むフューチャー・デザイン研究の概要を示したい.