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ワークショップ

2017

信頼の遺伝的基盤

日時:2018年2月1日(木)13:30-15:00

場所:北海道大学文学研究科 E304教室

参加者:竹澤正哲、瀧本彩加、高橋伸幸、他13名(計16名)

スピーカー:仁科 国之 氏(玉川大学大学院脳科学研究科・日本学術振興会)

タイトル:信頼の遺伝的基盤

アブストラクト:信頼(Trust)は個人間の人間関係のみならず、法律、経済、政治といった社会全体において重要な役割を果たしている(Yamagishi., 1998)。近年、他者への信頼行動の生物学的な基盤を明らかにする試みも行われ、オキシトシン(Oxytocin)と呼ばれるホルモンが人間の信頼行動を調節する働きを持つことが明らかになった(Kosfeld et al., 2005)。またオキシトシンの作用に重要な役割を果たしているオキシトシン受容体遺伝子(OXTR rs53576)も信頼行動と関連を示すことが明らかにされている。Krueger et al. (2012)は、OXTR rs53576のGG型を持つ男性はAG/AA型を持つ男性と比べて信頼ゲームで高い信頼行動を示すことが明らかにした。しかし、信頼には信頼行動の他に他者に対する信頼性の見積もりを行う一般的信頼があるがOXTR rs53576との関連は未だ調べられていない。そこで、本研究では、OXTR rs53576と信頼行動・一般的信頼との間に信頼行動と同様の関連が見られるかどうかを検討することを目的とした。

これまでのOXTR rs53576と信頼の研究は行動のみを対象としており、メカニズムに関しては不明なままである。オキシトシンと信頼に関してはメカニズムを明らかにしようとする研究はすでに行われており、オキシトシンを投与すると扁桃体の活動が抑制され信頼が増加することが明らかになっている(Baumgartner et al., 2008)。OXTR rs53576に関しても、扁桃体との関連が検討されており、GGはAA型よりも扁桃体の体積が小さいことが明らかになっている(Tost et al., 2010)これらの結果から、OXTR rs53576と信頼行動・一般的信頼の関連には扁桃体が関与している可能性が考えられることから、本研究では、扁桃体の形態的特徴に焦点をあてて、OXTR rs53576、信頼行動、一般的信頼との関連を検討した。
今回の発表では、これら2つの研究の結果について報告する。