向社会行動の進化にかんする実験研究
日時:2014年10月7日 (火)14:45-17:00
場所:北海道大学中央キャンパス総合研究棟2号館・中央ラボ2-1
スピーカー:瀧本彩加(東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会特別研究員(PD))
タイトル:向社会行動の進化にかんする実験研究
アブストラクト:
ヒトは幼いころから他者への思いやりを見せる。また、困っている人を見ると、つい手を差し伸べたくなる。近年、ヒト以外の動物もまた向社会行動をすることが、観察・実験研究から報告されている。しかし、向社会行動の進化に影響した淘汰圧や向社会行動の進化を支えた心理メカニズムはまだ明らかになっていない。本研究では、それらを明らかにすることをめざし、向社会行動が頑健に見られるフサオマキザルを対象に、彼らの向社会行動に影響する要因を実験的に検討した。その結果、フサオマキザルは、他者に利益を与えるかどうかを調べる向社会的選択課題において、他者との社会的な関係性に応じて、また視覚的交渉(要求行動など)・他者の手助け・自身の報酬の保障の有無といった状況に応じて、柔軟に向社会行動を示すことが示唆された。また、フサオマキザルは、自身の利益にはかかわりのない第三者同士のやりとりに対しても関心を持ち、その非互恵的(不公平)な他者とのかかわりを回避することもわかってきた。なお、そうした不公平への敏感性が向社会行動の進化を支えてきたのではないかという仮説を検証すべく、現在は、霊長類以外の向社会的な動物種(ウマ)を対象とした不公平への敏感性にかんする実験研究を進めている。その暫定的な研究成果について言及したのち、最後に、向社会行動の進化を支えた心理メカニズムを明らかにするための展望を述べたい。