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ワークショップ

2014

なぜ人々はコモンズ管理において協力をするのか?―繰り返しゲームによるアプローチ―

日時:2014年5月29日 (木)10:00-12:00

場所:北海道大学文学研究科 E304室

スピーカー:吉良洋輔(日本学術振興会特別研究員(PD・東京工業大学))

タイトル:なぜ人々はコモンズ管理において協力をするのか?―繰り返しゲームによるアプローチ―

アブストラクト:
本報告では、ゲーム理論の「繰り返しゲーム」を用いて、小集団の社会的ジレンマ(囚人のジレンマ)における協力行動を説明する。繰り返しゲームでは、社会的ジレンマが何回も繰り返される場合、非協力行動に対する懲罰が実行可能になって協力が維持できるようになる、というフォーク定理が知られている。しかしこの定理には、コモンズ管理のような小集団における協力行動の文脈に適用するうえで、二つの問題点がある。一つ目は複数均衡問題である。これは、モデル内に協力均衡や非協力均衡などが無数に存在するため、どれが実現されるのか分からない、というものである。二つ目は、ナッシュ均衡の仮定がコモンズ管理のような状況にはフィットしていない、という問題である。ナッシュ均衡は、例えば「別室にいる二人の容疑者の取り調べ」や企業間のカルテル形成のように、プレイヤー同士のコミュニケーションがほとんど不可能な状況にフィットした均衡概念である。そこで本報告では、これらの問題を回避するために、Strong Perfect Equilibriumを用いて繰り返しのあるN人囚人のジレンマを分析する。この均衡概念は、任意の複数のプレイヤーが同時に戦略を変更する「結託による逸脱」を許すものである。これは、コミュニケーションが可能な状況にフィットした均衡概念だと言える。分析の結果、割引因子が小さい場合には均衡は存在しないが、割引因子が大きい(長期的関係が存在する)場合には協力均衡のみが存在することが分かった。最後に今後の課題として、均衡への到達過程の分析を指摘する。ゲーム理論による解析では、均衡が存在する条件は特定できるが、均衡に到達するまでの過程は説明できない。そこで、これを実験室実験・シミュレーション・フィールド調査などを用いて特定する方法を展望する。