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ワークショップ

2010

第10回一般公開ワークショップ

※本ワークショップは、北海道大学社会科学実験研究センターとの共催で行われました。

スピーカー: 小田宗兵衛教授(京都産業大学)

発表タイトル: 実験哲学と実験経済学:Knobe効果の哲学実験の経済実験化

日時: 2011年2月17日(木) 10:00~12:00

場所: 北海道大学文学研究科 E204

参加者: 高橋泰城、伊藤圭子、犬飼佳吾、品田瑞穂、三船恒裕、ほか17名(計22名)

内容: Knobe効果の経済実験を報告する。 Knobe(2003)が、人々は悪い副作用を意図的とみなすいっぽうで、良い副作用を意図的とみなさない傾向をもつことを指摘して 以来、様々な哲学実験(被験者に,様々な仮想的状況を示し、公平無私な第三者の意見を求める)がおこなわれているが、被験者が正直に回答している保証がない。 本研究は、哲学実験を、謝金に基づいて利己的行動を誘発させる経済実験に翻案することで、被験者の回答の信頼度を高める。 実験結果は、ひとびとが、実験経済学で確認されている平等志向を強くもつ一方で、他人もそうであるとは考えていないことを示唆する。

実験経済学(Experimental Economics)は、その創始者Vernon Smith教授が2002年にノーベル経済学賞を授けられたことが示すように、経済研究の方法として確立し、世界中で様々な経済実験が行われている。 実験哲学(Experimental Philosophy)は、英語圏で影響力を増しつつある新しい哲学である。 伝統的哲学は、哲学者の直観たとえば「魂は常に思惟する」を根拠とする思想体系で、実験とは無縁であったが、実験哲学は、一般の人々 に公平や正義など道徳や哲学に関わる質問をして、その回答に基づいて一般のひとの直観や推論を分析する。

日本では実験哲学は哲学研究者の間でもまだあまり知られていないが、2010年3月27-28日に世界最初の実験哲学と実験経済学の 国際会議How and why economists and philosophers do experiments: dialogue between experimental economics and experimental philosophyが京都産業大学で開催され、実験哲学の創始者Stich教授を含む内外の実験経済学と実験哲学の研究者による講 演と研究発表が行われ、活発な議論がされた。
なかでもFischbacher教授の講演は、教授の最近の共同研究(Utikal & Fischbacher 2009)に基づくもので、哲学問題に対する意見を尋ねる哲学実験を経済実験のようなゲームにし、ゲームをプレイさせるこ とで参加者の哲学的判断を顕示させる可能性を示唆するものであった。

私たちは、哲学実験の経済実験化について研究を始め、Utikal & Fischbacher (2009)を経済実験として完成させて実験を行った。 その実験の結果と分析のまとめを報告する。

Knobe, Joshua (2003) : “Intentional action in folk psychology: An experimental investigation”, in Philosophical Psychology, 16(2), pp. 309-23.
Utikal, Verena & Urs Fischbacher (2009) : “On the attribution of externalities”, Research Paper Series Thurgau Institute of Economics and Department of Economics at the University of Konstanz.