• TOP
  • ワークショップ

ワークショップ

第3回SEFM 院生ランチョン

日時:2013年3月13日(水)

スピーカー: 杉野 佑太(北海道大学 文学研究科 心理システム科学講座)

タイトル: 声の記憶: 発話中の音響的情報と意味的情報が及ぼす影響

内容:
人は無意識のうちに他者の声を記憶している。しかし,その記憶は必ずしも正確なものではない。声の記憶を向上させる要因として,言語親近性効果が知られている。これは,「聴き手にとっての母語が話される場合,外国語が話される場合に比べて,より話者の声を記憶しやすい」というものである。しかし,なぜそのような効果が生じるのかは明確になっていない。そこで本研究では,母語の2つの特徴(音響的特徴:外国語に比べて聞き取りやすい,意味的特徴:外国語に比べて意味がよく理解できる)に注目し,それらに関する実験を行った。 (1)日韓話者を用いた再認実験:発話中の音響的情報の影響を調べるため,日本人を対象に実験を行った。参加者は,学習段階で,日本人話者と韓国人話者が日本語の単語を読み上げている録音を聴き,それらの単語を記憶した。テスト段階では,同様の録音を聴き,発話者の再認判断を行った。結果,日本人話者と韓国人話者では,学習された話者に対する正答率は同程度であったが,新奇な話者に対する正答率が異なっていた(日>韓)。これは,日本人の聴き手は,韓国人話者よりも日本人話者を正確に再認することができることを示唆している。(2)単音節・5音節・自然発話を用いた再認実験:発話される語の有意味性の影響を調べるため,日本人を対象に実験を行った。参加者は,学習段階で5音節発話(例:あ/か/と/ん/ぼ,と/ぼ/か/ん/あ)を聴き,それらの文字列を書き取った。テスト段階では,単音節(め,だ),5音節(め/だ/ま/や/き,ま/き/だ/や/め),自然発話(めだまやき,まきだやめ)のいずれかの発話を聴き,発話者の再認判断を行った。結果,5音節発話課題で,学習時と再認時の有意味性の影響が見られた(単語>非単語)。以上の結果からは,音響的情報と意味的情報の両方が,声の記憶に影響していることが示唆される。これらの相互的な関係性について更なる検討が必要である。

このページの上部へ