• TOP
  • ワークショップ

ワークショップ

第1回SEFM 院生ランチョン

日時:2013年1月23日(水)

場所: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟 W308室

参加者: 計22名

スピーカー: 豊川 航 (北海道大学 文学研究科 行動システム科学講座)

タイトル: 口コミサイトは人を賢くするか:不確実性下の意思決定における口コミと社会学習の効果

内容:
「集合知」あるいは「群知能」と呼ばれる現象が、これまで社会性昆虫を始めとする多くの動物のシステムから見出されてきた。集合知とは、集団中の個体間の相互作用によって単独個体には到達できないほどの高いパフォーマンスが創発する現象である。近年、動物の群れに集合知をもたらすメカニズムが人間社会の中にも広く存在することが分かってきた。特に現代の人間は、情報技術の革新によってインターネット上に「バーチャルな群れ」を形成している。バーチャルな群れの中で多くの情報がシェアされ、個人の意思決定に影響を及ぼしている。インターネットの発達による豊富な情報の共有は果たして人間の意思決定のパフォーマンスを上げるのだろうか。  本研究では近年インターネット上で著しく発展している口コミサイトに着目した。そこでは単なる頻度情報(e.g., 売上数やダウンロード数)だけではなく、選択肢の質に関する人々の評価(口コミ)などの多様な情報が掲載されている。インターネットの強みである多様な情報共有が集合知の発生に貢献するかどうかを確かめるため、実験室実験を行った。実験では、人間の意思決定場面として広く存在する最適化問題:Multi-Armed Bandit (MAB) 問題に焦点を絞り、意思決定に及ぼす口コミ共有の効果を確かめた。実験には個人でMAB課題を行う個人条件と、5人1組で社会情報を共有しながら行う集団条件があった。さらに集団条件の中には、頻度情報のみ共有する条件と、頻度情報と口コミ情報の両方を共有する条件との2種類を設けた。結果、集団条件は個人条件よりも高いパフォーマンスを示し、集合知が生じた。しかし口コミなしの場合に比べて、口コミのある集団条件の方がパフォーマンズが低かった。口コミありの条件では、口コミの示す情報と頻度情報の示す情報が食違ってしまい、かえって混乱を招いたことが示唆された。意思決定における"less-is-more"の効果は、集合知を生み出す過程でも影響するのだと考えられる。

このページの上部へ