題目: 地域におけるリサイクル行動と市全体における施策の社会的受容—札幌市ごみ減量化の事例調査—

氏名: 折田 生命

担当教員: 大沼進


本研究の目的は、地域で集合的に行う古紙の資源回収を集合行為論の観点から検討することである。

古紙回収は、既存の経済システムが確立している一方で、行政・事業者・市民の共同による集団資源回収も取り組んできている。集団資源回収は、参加する市民から見れば集合行為の側面がある。つまり、集団資源回収に参加するには労力的、時間的コストを伴うため、フリーライドの誘因が存在する。このような状況にあっては、Olson(1960)は“選択的”誘因が必要であるとするが、協力者にとっては必ずしも金銭的誘因が効果的であるとは述べていない。市は集団資源回収に登録している団体(町内会など)へ助成を行っており、その助成金は団体のものとなる。また、新ルール導入に際しその額を2円/kgから3円/kgに上げた。この観点から、では集団資源回収への協力者にとって助成金額増がどの程度誘因となるのか、あるいは他に有力な選択的誘因があるのかを明らかにすることが本研究の着眼点である。

調査Ⅰでは、札幌市の古紙問屋を訪れてのヒアリング調査を行った。古紙回収に関わる事業者の話によると、行政は行政による雑紙回収を開始するが、新聞・雑誌等の古紙は行政回収は行わず従来の民間業者及び集団資源回収で行うとしているが、古紙業者らは、雑紙も既存のルートを活用した方が効率よく分別・再資源化が可能だとしており、雑紙の行政回収は民業圧迫に繋がるとの懸念を示していた。

調査Ⅱでは、札幌市在住者18歳以上男女を対象として無作為抽出調査を行った。人々の集団資源回収への参加意図の規定要因について調べた結果、地域のためになれば嬉しいといったエンパワーメントと有効性の評価、時間的労力的コストが主に影響していた。他の人がやっていないのに自分だけ大変な思いをしたくないという相対的損失感や、有意な影響を及ぼしていたが、あまり強くはなかった。ところが、個別の業者回収や行政回収を従属変数にすると、相対的損失間の影響が際立ち、自分だけ大変な思いをしたくないと考える人ほど個別的な対応をしたがる傾向が見られた。以上より、「自分だけ」と思う人は個別的な回収ルートを、集合的なエンパワーメントを感じられる人には集団資源回収を、より促進するような対応がそれぞれに必要である可能性が示唆された。


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