題目: 決められない人の意思決定—意思決定方略が優柔不断さに及ぼす影響の検討—

氏名: 小林明日香

担当教員: 亀田達也


日常生活の中で様々な選択肢の間で迷って決められない人たちがいる。こういった人たちを私たちは優柔不断と呼んだりするが、過去の研究では他のパーソナリティとの関連ばかりに注目していたり、優柔不断という概念の定義が曖昧であったりする。そこで本研究では優柔不断を意思決定時間が長いことであると定義し、優柔不断な人たちがどのような意思決定をするのかを選択肢の評価の仕方(意思決定方略)と探索の仕方(探索方略)の観点から検討した。意思決定方略には補償型−非補償型を採用した(Payne et al. 1993)。補償型意思決定とは、ある属性の評価値が低くても他の属性の評価値が高いことによってカバーされるというように、属性を総合的に評価して決定する方略である。それに対して、非補償型意思決定とはそのような補償関係が認められない決定方略である。また、探索方略にはMaximizer−Satisficerを採用した(Schwartz et al. 2002)。Maximizerとは常に最良の選択を追求する傾向にある人を指し、Satisficerとは他によりよい選択肢があろうとなかろうと自分の基準に見合うもので満足する人のことを指す。また、過去の意思決定方略に関する研究では選択肢とその属性がマトリックス形式で記述された構造化タスクが用いられてきたが、本研究では実際の意思決定場面に則して選択肢の数が多く、属性が明示されていない非構造化タスクも併せて2種類のタスクを行った。これらのタスクと意思決定方略・探索方略の違いが意思決定時間にどのように作用するのかを検討した。

結果、構造化タスクでは意思決定方略が意思決定時間に影響を与え、補償型意思決定の方が意思決定時間が長かった。また、非構造化タスクでは探索方略が意思決定時間に影響を与え、Maximizerの方が意思決定時間が長かった。しかし、意思決定時間はタスク間で相関していたのにもかかわらず、これらの方略はタスク間で一貫していなかった。つまり、意思決定方略・探索方略は特定のタスクや場面に特有のものであるということを示している。よって、今後はあらゆる状況に共通して意思決定時間に影響を与える要因を検討することが求められる。また、本研究には意思決定方略・探索方略の測定方法やサンプル数が少ないなどいくつかの問題点があり、今後実験方法の改善が必要である。


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