題目: 環境配慮行動のアクションリサーチ 〜レジ袋削減やマイバッグ持参に関する調査〜

氏名: 佐藤智子

担当教員: 大沼進


 現在、全国各地でレジ袋削減の機運が高まっており、各自治体でレジ袋の有料化など、レジ袋削減のための様々な方策がとられている。本研究は、スーパーのレジでの「レジ袋お使いになりますか」といった声かけアクションに着目した。この声かけを行ったときに、レジ袋削減効果がどのくらいあるのかを確かめることを目的に、札幌市内あるいは近郊のスーパーの協力を得て、レジでの声かけの実施やポスターの掲示など、店舗や店員からの働きかけを行っていただき、これらの介入の実施前後でのレジ袋辞退率の変化を調べた。また、従来の態度-行動モデルを修正し、行動の文脈の影響を追加したモデルを検証するために、当該店舗での買い物客を対象にアンケート調査を実施した。分析有効回収率は41.5%(n=1342)であった。

 第一に、レジ袋辞退率については、店頭観察による実測値で、全体としてアクションの導入前後で5%程度の上昇が見られた。この5%程度高まるという傾向は、家庭ごみ有料化を導入している地域か否か、平日か土曜かなどに関わらず一貫していた。アンケート調査の分析結果から、レジでの声かけ以外に、性別、年代、職業、同居人数、住居形態が集合住宅か一戸建てか、住居形態が賃貸か自己所有か、居住地の家庭ごみ有料化導入、調査店舗立地地域の家庭ごみ有料化導入、曜日、時間帯の10項目も、レジ袋の辞退に影響を与えることがわかった。

 第二に、レジ袋辞退行動に至るまでの行動のプロセスを、レジ袋を辞退する計画的行動プロセスと、レジ袋をうっかりもらってしまう状況依存的プロセスの二つのプロセスから行動を説明するモデルが確かめられた。すなわち、従来の計画的行動理論によるモデルと整合性を保ちつつも、さらに、買い物をするときの文脈に依存する非意図的なプロセスもまた行動を説明できることが明らかになった。さらに、この二つのプロセスを分けるスイッチング要因をモデルに組み込んだ。本研究ではレジでの声かけがスイッチング要因として確認された。つまり、「レジ袋はお使いですか」などという声かけがあると、計画的行動モデルに沿って「行動意図」を高め、レジ袋辞退という行動へと進みやすくなり、逆に、声かけがないと、状況依存的プロセスに沿って「非意図」が高まり(より意識しなくなり)、レジ袋をもらうという行動へと進みやすくなることが明らかになった。


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