題目: 集団等質性知覚における相互依存性の影響に関する研究

氏名: 小野千咲

担当教員: 高橋伸幸


 我々は、他者の行動を認知する際、行動の理由をその人の性格などの内的属性にばかり帰属し、周囲の環境などの外的要因にはあまり帰属しないというFAEという傾向(Ross, 1977)を持つとされている。しかし、常にFAEを起こしてしまうのではなく、FAEを起こすと非適応的となるような場合には、起こさないと考えることができる。本研究では、FAEを抑制し、外的要因への帰属を促進する要因として、対象人物と将来相互依存関係を持つ可能性(以下、相互依存性)を考えた。対象人物との間に相互依存性がある場合には、外的要因をも考慮しなければ、正しくその人物の行動を予測することはできず、大きな損失を被る可能性が生じると考えられるからである。通常、相互依存性のある集団は内集団であり、相互依存性のない集団は外集団だと考えられるが、相互依存性のない集団のメンバーに対しては、内的帰属のみを行ってしまうため、行動の理由が同じように思えてしまう(≒等質に見える)が、相互依存性のある集団のメンバーに対しては色々な行動の理由を考えるため、比較的等質には見えない。ここに集団に対する等質性知覚の内外差≒外集団等質性知覚が存在すると考えた。

 以上の議論に基づき、集団の行動認知のバイアスについて、以下の二つの仮説を検証した。そして、集団の内外に関わらず、相互依存性があると外的帰属も行うが、ないと内的帰属のみを行い(仮説1)、相互依存性がある集団よりもない集団に対する等質性知覚の程度が高くなる(仮説2)と考えた。

 これらを検証するため、本研究では次のような実験を行った。2つの集団を作り各集団内で2回SDゲームを行い、被験者は、一回目SD(罰制度あり)の結果を基に二回目SD(罰制度なし)での他の人たちの行動を予測した。被験者はSDには参加しなかった。また、実験の最後にPDを行うかどうかということで相互依存性を操作した。もしFAEが生じているなら2回目も協力と予測するが、外的要因にも目が向けば、2回目には協力しないかもしれないと思うと考えられる。本研究では、その帰結として、内集団とPDを行う条件では外集団等質性知覚が生じ、外集団とPDを行う条件では内集団等質性知覚が生じるだろう、と考えた。

 この実験から、仮説1については概ね支持された。しかし、仮説2に関しては、それに合致した結果が部分的には得られたものの、仮説が支持されたとは言えなかった。


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