題目: 社会的ジレンマ問題の解決:複数のゲーム状況における連結の検討

氏名: 清田翔太朗

担当教員: 高橋伸幸


 我々は、水産資源の過剰消費や家庭のゴミ出し問題などの社会に生じる様々な問題を如何にして解決し、現代社会を形成しているのだろうか?人間社会に生じる問題の多くは、個人・国家とその集団全体との利害が一致しないために協力状態が達成できず、葛藤が生じることに起因している。これが、社会的ジレンマ(Social Dilemma:以下SD)である。

 これまで様々なSD研究が積み重ねられてきたが、理論的解決策は見出されていない。しかし、近年、「連結」によるSDの解決可能性について検討する研究が盛んに行われている(Milinski, Semman, Krambeck, 2002)。「連結」とは、人々があるゲームにおける行動を、それとは別のゲームでの他者の行動情報に基づいて決定するという行動パターンである。

 これまで、一般交換ゲーム(Panchanathan, Boyd, 2004)、PDゲーム(品田, 2005)、信頼ゲーム(Barclay, 2004)のそれぞれとSDゲームとの連結可能性について,個別には検討されてきた。しかし、連結を通じたSDの解決について扱う上で、想定可能な状況には様々なものがあり、その中で果たしてどの交換との連結が人間社会において重要な役割を果たしているか、という点については明らかではない。

 そこで、本研究では、人間社会にある様々な個人間交換のうち、具体的にどのような交換とSDとを連結することで人々はSDを解決しているのかということ、また、連結行動を媒介する心理的要因を探索的に明らかにすることを目的とした。

 そのことを検討するために、本研究では、場面想定法を用いた質問紙調査を行った。ここで想定したゲーム状況は、これまで、理論・実証の両面から連結によるSD解決の可能性が検討されてきた一般交換ゲーム・強制的プレイPDゲーム・信頼ゲームに加え、新たに選択的プレイPDゲーム・タカハトゲームの5つである。本研究では、強制的プレイPDゲーム・一般交換ゲーム・信頼ゲーム・選択的プレイPDゲームでは連結がみられ、タカハトゲームでは連結が見られないのではないかと予測した。

 結果は以下のことを示した。強制的プレイPDゲーム・一般交換ゲームでは、予測が支持され連結が見られた。また、連結は、SDでの非協力者を排除しようという強い動機に基づいているわけではなく、相手が協力するだろうという予測や互恵性など複数の心理的要因に基づいている可能性が示唆されている。この点が本研究の結果新たに示されたことである。


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