題目: 市民参加が社会的受容に及ぼす影響 〜札幌市ごみ減量化政策の事例調査〜

氏名: 上城戸朋恵

担当教員: 大沼進


 本研究の目的は、市民参加の手続きが政策受容にどの程度を及ぼすのかを明らかにすること、そして手続き的公正感などを高める要因を明らかにすることである。本研究では、札幌市ごみ減量化総合的施策の事例を取り上げて調査を行った。この総合的施策を決定する前に、審議会は市民意見交換会を実施した。この意見交換会では、誰でも参加でき、少人数によるテーブルですべての参加者が発言し、テーブルごとに意見が集約され、さらに区全体、市全体の意見として集約された。なお、ごみの有料化も一つの大きな論点となっており、市や新聞社などの各調査によると有料化への賛否は半々であった。

 本調査は無作為抽出された札幌市民を対象に郵送調査を行った。質問紙の回収率は52%(有効回答数739)と高かった。

 結果は、まず、社会的受容に関連する要因は以下の通りであった。施策の内容がよいと評価されるほど、また、政策決定の手続きが公正だと評価するほど、施策を受容していた。施策の内容評価は、政策の社会的便益の高さと個人的負担感が影響し、社会的ジレンマの観点から説明できた。手続き的公正感は、情報公開が十分なされていると思われるほど、また、市民の意見が施策に反映されていると思われるほど、高められることが確認された。さらに、意見交換会で用いた、参加者を小グループに分けて議論しそれを集約する手法がよいと評価されるほど、また、その意見を「市民の意見」と考えられるほど、意見交換会の手続き的公正感を高めていた。

 第二の分析の主眼は信頼と社会的受容の関係であった。行政への信頼が高いから社会的受容に影響するのか、社会的受容につながる手続きにより信頼が高まるのか、いずれの説明が妥当か検討したところ、双方向の説明が可能であったが、行政の信頼から政策受容への影響は小さく、政策の受容が行政への信頼を高めていた。

 最後に、有料化に賛成の人と反対の人では政策の受容に至るプロセスが異なるかを検討した。有料化への賛否と政策受容の関連は弱かった。有料化に賛成の人は意見交換会の手続きを重視し、反対の人は政策の作成過程全体での手続きを重視するという点でやや異なっていたが、全体としてはほぼ同じ要因連関であった。

 賛否の拮抗する事例でも、手続き的公正感が政策の社会的受容につながることが示された。


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