題目: Research about changes of social beliefs and group identity

氏名: 米谷友香里

担当教員: マーク・H・B・ラドフォード


大学生が形成する社会関係のうち、重要なものの一つにクラブ・サークル活動が挙げられる。クラブ・サークルで過ごす時間やそこでの経験は大学生活において重要な位置を占めるため、所属しているクラブ・サークルの性質が、集団メンバー個々人のさまざまな信念に影響を及ぼすことが考えられる。そこで本研究では、1年生から4年生までの学生を対象に調査を行い、学年が進むに従って、集団アイデンティティや社会一般についての信念がどのように変化するかを分析した。

本研究では、集団アイデンティティとしてcommon identityとcommon bondを、社会一般の信念として一般的信頼・社会的用心深さ・関係流動性信念を取り上げ、これらが学年の推移とともにどう変化するかを予測し、仮説を立てた。具体的な仮説は、「高学年の学生ほど、common bondは高い」「common identityは学年とは関係なく、一定である」「高学年の学生ほど、一般的信頼が高い」「高学年の学生ほど、社会的用心深さが低い」「高学年の学生ほど、関係流動性信念が高い」「クラブ・サークル間で関係流動性信念の水準が異なる」の6つである。

これらの仮説を検証するため、北海道大学のクラブ・サークルに所属している学生96名を対象に質問紙調査を行った。質問紙では、common identity、common bond、一般的信頼、社会的用心深さ、関係流動性信念を測定する尺度に加え、クラブ・サークルの基本情報や特質についても回答を求めた。

分析の結果、common bondは高学年の学生ほど高かったが、common identityは2年生でいったん低くなっていた。また、一般的信頼は高学年の学生ほど高く、社会的用心深さは高学年の学生ほど低いことが示された。さらに、関係流動性信念は2年生でいったん低くなっており、その水準は、クラブ・サークル間で比較しても差が見られなかった。

common identityと関係流動性信念については仮説が支持されなかったが、どちらも2年生において低くなる傾向が見られた。これは、2年生がある程度の時間をそのクラブ・サークルで過ごしたことで、入部した頃の理想とのギャップが見えてきたり、活動自体に飽きてきたりすることで集団そのものへの愛着が低くなることや、それに反して活動の中心として活躍を期待されるために集団から離脱しにくくなっていることが原因と考えられる。


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