題目: ボランティア活動の参加意図とエンパワーメントに関する調査: 豊平区陵陽中学校の事例

氏名: 須藤泰史

担当教員: 大沼 進


学校教育で「ボランティア活動」や「地域活動」が重要視されるようになって久しいが、実際にその効果がどのように出ているかについて定量的に検証している研究は少ない。本研究は、札幌市豊平区役所と共同で地域活動を展開している市立陵陽中学校の協力により、学校教育における地域へのボランティア活動参加の効果について探索的に調べることとした。

調査は、学校で行われている過去および現在の地域活動が、生徒の将来の地域活動への参加意図にどのような影響を及ぼすのかに焦点を当てた。関連する要因として、地域活動へ対するエンパワーメント、勉強や部活、遊ぶことと比べてどちらに重きをおくのかという意識、人とのふれあいの積極さや主観的規範、社会的規範の評価などを挙げた。また地域活動を集合行為としてとらえ、社会的アイデンティティについても検討した。

調査は、活動を行う前の4月24日(調査1)と、7月の「とよひらおそうじ隊」が行われた直後の7月24日(調査2)に行った。今年度の活動は、1年生の授業の一環として学年全員のmandatoryな参加の活動であった「花いっぱい運動」(6月)と、voluntaryな参加の「とよひらおそうじ隊(雨天のため交流会に変更)」(6月)、学校周辺の「とよひらおそうじ隊」(7月)、「げんき夏まつり」(8月)、公園の「とよひらおそうじ隊」(10月)を行った。

調査1の結果、参加意図へは、エンパワーメントが最も大きな影響を、続いて、過去の活動経験、人とのふれあいの積極さが影響を及ぼすことが示された。エンパワーメントへは人との触れ合いの積極さや社会的規範が大きな影響を及ぼしていた。また社会的アイデンティティは、それ自体が参加意図へ影響するのではなく、エンパワーメントや参加意図が高まった結果アイデンティティが高まると解釈する方が説明力が高かった。

調査2の結果も調査1とほぼ同様であったが、参加意図からアイデンティティへの影響は調査1に比べるとはっきりとはみられなかった。

さらに、調査1から調査2への、全体としてあるいは個人内の変化や、要因間の影響関係を分析した。その結果、過去の経験や参加意図が、人間関係を形成することの楽しさや実際に友人の数が増えたり、アイデンティティを高めたりすることなどにつながっているという傾向が読み取れた。

考察では、mandatoryな参加とvoluntaryな参加の違いについて論じつつ、本研究ではこの2つが十分に分離し切れていない限界をふまえて、今後の展開について述べた。


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