題目: 外向きの集団主義、内向きの集団主義: 記憶課題を用いた日米比較研究

氏名: 佐々木天真

担当教員: 結城雅樹


本研究は集団のどの側面に注目するかが日米で異なるという仮説を検証した。対象への関心を測定するには、記憶課題を用いた。

Oyserman, Coon, Kemmermeier (2002)はその時点までに存在した集団主義と個人主義の比較文化研究のメタ分析を行い、アメリカ人が個人主義的であり、同時に集団主義的であるという知見を得た。それを踏まえ、Yuki (2003)は集団間比較志向と集団内関係志向という集団主義の二つのタイプが提唱した。それによるとアメリカ人は集団間の出来事に注目する集団間比較志向的な心理傾向を持ち、日本人は集団内の出来事に注目する集団内関係志向的な心理傾向を持つ。竹村・結城・Maddux (2004)では、自己申告尺度を用いて、この集団主義のタイプの違いを検証した。また、Yuki (2005)では脱個人化された信頼の基盤の日米での差を、シナリオ課題と信頼ゲームを用いて検証した。両研究はYuki(2003)で提唱される集団主義の違いを支持するパタンであった。

上記の先行研究を踏まえると、本研究の予測は以下のようになる。日本人がアメリカ人に比べて所属するメンバー間の出来事、つまり集団内の出来事に対して集団間の出来事よりも関心を向けているパタンを見せ、アメリカ人は日本人に比べて集団間の出来事に対して集団内の出来事よりも関心を向けているパタンを見せる。

本研究は3つに分かれた。研究1は日米で行い、自分の所属する集団を含まない集団と集団の間の関係、または自分の所属しない集団の中のメンバーの間の関係、見知らぬ個人間の関係をコンピュータ上で提示し、それらを対象に再生課題を行った。研究2は日本でのみ行い、自分の所属する集団を含む集団間の関係、または、自分が所属する集団の中で、自分を含めたメンバー間の関係、自分を含めた見知らぬ個人間の関係を紙面にて提示し、再生課題を行った。一方、研究3は日米で行い、自分の所属する集団を含めた集団間の関係と、所属する集団で、自分を含まないメンバーに関することを、シナリオを用いて双方提示した。

研究1、研究2では仮説を支持しないパタンが日米で見られた。しかし、研究3において仮説が支持された。


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