題目: ネットワークコミュニティに対する人々の評価と構造的特徴の関係:www掲示板を用いた探索的研究

氏名:  鈴木亮磨

担当教員:  山岸俊男


本研究の目的は、掲示板を構成するどのような特徴が多くのユーザを惹きつけ、コミュニティとしての存続を可能にするのかを探索的に検討することである。現在、インターネット上には大小問わず数多くの電子掲示板を用いたコミュニティが存在しているが、その中には発言が途絶えて自然消滅するものも多い。そこで本研究では、どのような掲示板が多くのユーザから選択され、長くコミュニティとして機能しうるのかを検討するために、14名の評価者に任意抽出した60個の掲示板を読んでもらい、掲示板の受容性や、掲示板に対する参加意図に関わる項目について評価させた。また、どのような掲示板が高く評価され選ばれるのかという掲示板の選択を問題とするため、多数の掲示板の発言の構造に関する指標を、その掲示板の特徴として扱う。発言の構造に関する指標としては、総発言者数や返信の数などを用いた。なお、掲示板の抽出と構造変数の作成は、NTT武蔵野研究開発センターによって行われた。

本研究では、こうした構造的特徴のうち、どのような構造的特徴がwww掲示板に対する評価の良し悪しが予測できるかを、探索的に検討した。分析の結果、中心性とクラスター度という2つの構造的特徴が掲示板に対する評価と強く関係していることが明らかになった。中心性とは、ユーザ間のやりとりの偏りを表す指標であり、値が高ければ少数の中心的なユーザが多くのユーザとやり取りをしている(誰にでも返信する協力的なユーザがいる)ことを意味する。次に、クラスター度とは、1つのツリー上にしか登場しなかったユーザの比率であり、ユーザ間の「話題の分裂度」を表すと考えられる。構造変数を独立変数、評価を従属変数とした重回帰分析の結果、掲示板の親密さや受け入れられやすさの評価(受容感の知覚)を高めていたのは中心性であり、強く抑制していたのはクラスター度であることが示された。つまり、多くのユーザと積極的にやり取りする少数の「筆まめ」なユーザがいると、評価者はその掲示板を「参入しやすい、雰囲気の良い掲示板」と評価し、ユーザ間で話題が共有されていない掲示板に対しては、評価者は「親密さがなく、返信が期待できない」と評価していた。さらに、掲示板の内容の分析として、顔文字の使用頻度との関係を調べたところ、発言中に顔文字が多く使われた掲示板は、顔文字をあまり使わない掲示板よりも、受容感が高いと評価されることが明らかになった。


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