題目: ごみの分別や減量の取り組みに関する調査研究
氏名: 加賀谷文江
担当教員: 大沼 進
現在、環境面における循環型社会の実現に向け様々な議論がなされているが、従来の環境配慮行動の研究分野を含め、ライフスタイルの多様化は考慮されていない。そこで本研究では、ライフスタイル別にどのような行動変容アプローチが効果的かを探り、排出抑制の可能性について検討するための基礎資料を提供することを目的とし、札幌市民を調査対象として、各家庭でのごみ問題や分別・リサイクルなどについての認知や具体的行動、日常の消費・購買行動に反映されるライフスタイルを総合的に検討した。
調査Ⅰでは、現場の実情を探索的に把握するため、グループインタビューなど数種類の調査を行った。その結果、非常に熱心に問題に取り組んでいる住民がいる一方で、「マナーが悪い」「沈黙する」といった住民が多数存在する様子がうかがえた。そこで、多様な人びとの意見や行動を把握し、ライフスタイルや日常の行動から人々の類型化を試みるべく、調査Ⅱでは無作為抽出・郵送留置訪問回収によるアンケート調査を行った。
日常での消費購買行動と消費購買量の回答に関して、数量化Ⅲ類と因子分析により行動タイプを類型化した。その結果、消費購買行動では「手間のかかる行動」、「リデュース行動」、「無計画消費行動」、「生ごみ処理行動」、「リユース行動」という5つの指標が作成され、消費購買量では「プラ消費量」、「日配品購買量」、「ラーメン食事量」、「外食量」、「びん類購入量」という5つの指標が作成された。さらに、これら10の指標をもとにクラスター分析を行い、「家事手抜き型」、「うっかり型」、「割り切り型」、「プラスチック依存生活型」、「模範的生活型」の5つに人びとを類型化した。これらの人びとの類型別に、ごみ分別・排出行動や認知・態度などの各尺度とを比較し、5つのクラスターの特徴を分析した。「分別・リサイクルの実行可能性評価」をはじめとする各尺度で有意な差異が見られ、全体的に、プラスチック依存生活型は他の4タイプよりも環境を配慮した態度や行動がとれていないが、逆に残りの4タイプは認知などに大きな違いはなかった。
考察では、家事手抜き型、うっかり型、割り切り型の3タイプは態度では模範的生活型とほとんど差はないことから、まずこの3タイプに対してアプローチし、プラスチック依存生活型に対しては、他の4タイプの行動変容を反映させる長期的な展望に立った対策の必要性が検討された。