題目:  情報発信主体の信憑性がリスク受容に及ぼす影響—遺伝子組み換えを題材として—

氏名:  岡田啓子

担当教員:  大沼進


ある技術、現象とそれに伴うリスクを吟味し、最終的に当該技術を受容・拒絶する判断の際に重要になる要因は何であろうか。本研究では「遺伝子組み換え」を題材として、リスクや利益(ベネフィット)に関する情報を発信する主体の立場や信憑性、加えて当該リスク関する知識量に着目し、検討した。さらに、認知的に精査したリスクベネフィット評価と、不安感のいずれかがより強く影響するかも検討した。

実験に先立って、遺伝子組み換え技術のベネフィットやリスクについて、予備調査を繰り返し、中立的な立場から書かれた刺激文章の作成を行った。そうして作成した刺激文章の発信主体を自治体(賛成派)、市民団体(反対派)、新聞社(中立派)の3つと、主体内での信憑性(信憑性高・信憑性低)を操作して実験を行った。実験は、まず事前質問紙で事前の態度や知識測定をした上で、刺激文章を提示し、事後質問紙で刺激文章提示後の態度や事前の知識、文章を読んだ印象などについて質問した。

結果から、情報発信主体とその信憑性は、刺激文章内容の信用度には影響を与えているものの、態度決定の際の直接の要因ではないことが示された。また、態度決定に大きな影響を与えるのは技術や制度に対する不安感情と、ベネフィットに対する評価であった。その中でもベネフィットに対する評価をどれだけ高く見積もるかが、態度決定に大きな影響を及ぼしていることが示唆された。事前の知識は態度に影響を与えていたとはいえなかった。

また、遺伝子組み換え技術に対する態度には、強い性差が見られた。一般に、男性のほうが賛成の態度を示し、女性のほうが反対の態度を示すことが示唆されている。また、男性のほうがベネフィットに対する評価を女性より高く見積もることも示された。

本研究はトピックを遺伝子組み換え技術に絞ったものだったが、この結果がさまざまなリスク事象にどの程度当てはまるものなのか、今後のさらなる研究が必要とされる。


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