題目:  誰の公正? 誰のための公正? −公正感尺度作成の試み−

氏名: 片岡 由貴和

担当教員:  高橋伸幸


従来、公正感を扱う研究は、多くの場合において、人々がどのような場合に何を公正だと思うのかという点に焦点が当てられてきた。本研究の目的は、今まで焦点が当てられてこなかった「人々が公正を追求する程度」を調べるための尺度を作成することである。

 尺度を作成するにあたって、本研究では、公正感を、「誰の公正基準を達成しようとするのか」という次元と、「誰が公正基準を達成するのか」という次元の組み合わせから構成されるのではないかと仮定した。具体的には、1:自分の公正基準を自ら達成しようとする意識、2:自分の公正基準を他者に達成させようとする意識、3:他者の公正基準を自ら達成しようとする意識、4:他者の公正基準を他者に達成させようとする意識の4つである。そこで、これら4つの意識をそれぞれ個別に尋ねる項目を作成し、質問紙を作成・配布することで公正感にはどのような因子が存在するのかを調べた。

 因子分析の結果、調査前に想定していたものよりも数多くの因子が抽出された。そこで、調査の結果を踏まえて項目を選別・追加した質問紙を新たに作成し、再調査を行ったが、再調査でも調査前に予想していたものよりも数多くの因子が抽出された。再調査で抽出された公正感を構成する因子は、1:他者の公正基準を他者に達成させようとする意識、2:不公正な振る舞いに対する寛容さ、3:ルールを遵守する意識、4:公正基準を他者に達成させようとする意識、5:他者の公正基準より自分の公正基準を優先する意識、6:不公正な他者に対して憤慨する意識、7:アンフェアに扱われて反発する意識、8:本研究では意味が特定できなかった意識の8つである。これらの因子について、それぞれの因子を適切に測定可能な項目の選別をさらに行い、最終的に43項目を尺度の項目として確定した。ただし、第1因子から第5因子まではある程度ロバストに存在すると考えられるが、それ以外の3つの因子の存在は、それほど確かなものではないと考えられる。

 これらの因子の中には、調査前に想定した4つの意識のうち、4の他者の公正基準を他者に達成させようとする意識のみ見ることができた。その他の3つの意識に明確に対応するものは見られなかったが、最初に想定した公正感の1の側面は因子分析の結果の第4因子と第5因子に、2の側面は第6因子に、3の側面は第3因子に、それぞれ対応するのではないかと考えられる。


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