題目:  不公平分配の意図への嫌悪と結果への嫌悪—Truncated Ultimatum Gameを用いた実験研究—

氏名:  堀田結孝

担当教員:  山岸俊男


本研究では、通常の最後通牒ゲーム(ultimatum game)に変更を加えたtruncated ultimatum gameと呼ばれるゲームを用いて、相手の意図や悪意によらずに不公平分配がなされた場合でも、相手を罰するプレイヤーが観測されるかを検討した。

最後通牒ゲームは、提案者と受け手の2者間で金銭の分配を行うゲームである。提案者は受け手へ分配方法を提案し、受け手は提案の受入もしくは拒否を選択する。受け手が提案を拒否すると、両プレイヤーとも利得が0になる。これまでの先行研究から、多くの受け手が、受け手にとって不公平な分配を拒否すること、特に不公平分配が提案者の意図や悪意によってなされた場合の方が拒否されやすいことが知られている(Falk, Fehr & Fischbacher, 2003)。一方、不公平分配が提案者の意図によらずに生じた場合でも、不公平な結果そのものに嫌悪して拒否する者が、わずかな割合で存在する点も確認されている(Falk, et al. 2003; Ohmura & Yamagishi, 2005)。

本研究では、提案者が二種類の分配方法の中から受け手へ提案する分配方法を選択する、truncated ultimatum gameを実験で用いた。実験では、提案者が意図的に不公平分配を提案する「意図あり条件」と、提案者の意図によらずに不公平分配がなされる「意図なし条件」の二条件を設定し、「意図なし条件」でも拒否者が見られるかを検討した。更に本研究では、社会的価値志向性と、ゲーム状況をどのような状況と認知するかの状況認知に着目し、それぞれと拒否行動との関連を探索した。

実験の結果、先行研究のOhmura & Yamagishi (2005)と比べて低い水準であるが、「意図なし条件」で6%の拒否率が得られた。社会的価値志向性については、「意図あり条件」・「意図なし条件」両条件とも、拒否行動との関連が見られなかった。状況認知については、「意図あり条件」において、拒否者の方が受入者よりも、ゲームでの二者間の関係を協力すべき関係と捉える傾向にあった。また「意図あり条件」で、男性の方が女性よりも拒否しやすい傾向が見られた。

相手に不公平を行う意図がない場合でも、相手を罰する戦略を取る者が本当に存在するのか、またそのような行動が社会的交換場面において適応価があるかどうかを、今後の研究で議論・検討されたい。


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