題目: Third Party Punishmentが示す集団の枠組み「内集団と外集団、どちらを罰するか」

氏名: 山本 祥史

担当教員: 山岸 俊男


 本研究は、先行研究であるShinada,Yamagishi, & Ohmura(2004)に基づき、Third Party Punishment(交換における不平等状態を交換の当事者ではない第三者がコストをかけて是正する行動; Fehr & Fischbacher, 2004)が自集団に向けられやすいことを検討した。

 Third Party Punishmentは、全くの他人に向けられるのであれば、適応的な意味を見出せない行動であるが、集団内の非協力者を協力に導く2次の協力行動として捉えると、適応的な意味のある行動であると考えられる。Shinada et al. (2004) は、1次の協力行動が自集団成員に向けられやすいという先行研究(cf.神・山岸,1997;Yamagishi ,Jin, & Kiyonari, 2000)を援用し、Third Party Punishmentが2次の協力行動であるならば、1次の協力行動と同様に、自集団に向けられやすいと予測し、その予測を検討する実験を行った。実験では、集団カテゴリーとして学部を使用し、自分の所属する学部と所属しない学部の2つを対象に、Third Party Punishment Gameを行った。その結果、自集団内の一般交換に対して協力的な参加者では予測が支持されたが、非協力的な参加者に関しては、予測に反して外集団に対しても罰を与えていた。

 本研究は、Shinada et al.(2004)で外集団に罰が与えられていた理由について、罰行使者が罰するために支払うコストと、罰を受けた者から差し引かれる金額の比率(罰の費用対効果)が1:3である実験デザインに問題があると考えた。つまり、Shinada et al.(2004)では、自己利益を多少下げてでも相手との相対的な格差を広げることが可能であるために、「競争的」動機による罰行動が起こりやすく、それが外集団に向けられたと考えた。

 そこで、本研究では罰の費用対効果を1:1に設定して、相手との相対的な格差を広げられる要因を排除し、Shinada et al.(2004)と同様の実験を65名の学生を参加者として行った。その結果、外集団に対する罰行動はShinada et al.(2004)に比べて減少し、自集団に協力的な参加者だけでなく、非協力的な参加者についてもThird Party Punishmentが内集団に向けられることが示された。


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