題目: 集団間競争が自集団への愛着プロセスに及ぼす影響

氏名: 佐藤 美佳

担当教員: 結城 雅樹


 本研究の目的は、内集団の重要性を規定する2種類の愛着 (common identityとcommon bond) の説明力のパターンが、内外集団間の関係を競争的と定義するか否かによって異なることを検討することで、集団間競争時と非競争時における心理プロセスの質的違いを明らかにすることである。具体的には、集団間競争を認知している場合には内集団自体への愛着であるcommon identity型になるのに対して、集団間競争の認知がない場合には内集団メンバーへの愛着であるcommon bond型になると予測し、2つの研究を通してその検証を行った。

 研究1では、大学の部活を対象にして、集団メンバーが集団間競争に直面する時期(集団間競争時)と直面していない時期(集団間非競争時)のそれぞれで、内集団の重要性知覚と2種類の愛着を測定した。その結果、予測と一貫する方向の結果は一部でしか得られなかった。

 研究1での問題点は、集団間競争時と集団間非競争時の設定が適切でなかったことであった。すなわち、競技大会が近くにあるか否かということをもとに「集団間競争時」「集団間非競争時」という2つの時期を設定したが、その2つの時点間で競争性が明確に異なっていなかったという問題点があった。そのため、研究2では、実験室実験により同じ仮説を検証した。

 研究2では、プライミング法により日本と外国の集団間文脈における外集団脅威の有無を操作した後、所属している大学に対する2種類の愛着を測定した。その結果、外集団脅威をプライミングする条件ではcommon identityが、プライミングしない条件ではcommon bondが内集団の重要性を規定する要因となることが予測されたが、結果、予測とは正反対のパターンとなった。

 以上の結果は、いずれも本研究の仮説を支持するものではなかった。その原因として、調査・実験デザインの様々な問題点が考えられる。特に、サンプルの種類と数が少なかったことと、プライミング方法が効果的でなかったことが大きな問題点であった。


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