題目: 「類友を呼ぶ?」:同類原理に関する日米比較研究

氏名: 長澤 孝充

担当教員: 高橋 伸幸


 社会において「似ている人同士が集まって相互作用している」状況をhomophilyという。このhomophily現象は、選択が制限されているなどの環境要因によって結果的に生じるinduced homophilyと、人々が「自分と似ている人とつきあいたい」と思い、自ら選択的に自分と似ている人とつきあおうとすることによって生じるchoice homophilyに分類される。本研究では、後者のchoice homophilyを生じさせるような心理傾向——類似他者選好傾向(自分と似ている人とつきあいたいと思う心理傾向)に焦点を当てる。本研究では、機会コストと類似他者選好傾向、ひいては機会コストとchoice homophilyとの関係を検討する事を目的とする。機会コストの小さい社会では、自分と似た人とだけつきあっていたとしても、損をしてしまう可能性は低いと考えられるが、機会コストの大きい社会では、自分と似ている人とだけつきあっていると、外部に存在するより良い機会を逃してしまい、結果的に損をしてしまう可能性がある。このことから、機会コストの大きい社会では、類似他者選好傾向のみならず「自分と似ていない人とつきあいたい」と思うような心理傾向も備えていることが適応的であると考えられ、本研究ではそのような心理傾向を「非類似他者選好傾向」と定義する。本研究では、「この二つの心理傾向は、社会における機会コストによって差がある」という仮説を提唱し、日米で質問紙調査を実施・検討した。

 具体的には、先行研究(山岸(1998))から、機会コストの大きい社会の代表としてアメリカを、機会コストの小さい社会の代表として日本を採用し、二つの仮説——仮説1:「類似他者選好傾向に関しては、日本において、アメリカ以上に強く見られる」と仮説2:「非類似他者選好傾向に関しては、アメリカにおいて、日本よりも強く見られる」を検討した。

 結果は、以下の通りであった。仮説1:類似他者選好傾向に関しては、仮説とは逆に、アメリカの方が日本よりも強く見られた。仮説2:非類似他者選好傾向に関しては、仮説とは逆に、日本の方がアメリカよりも強く見られた。これは、本研究でアメリカの標本として使用したワシントン州立大学の学生と、日本の標本として使用した北海道大学の学生との間で、一般的信頼に差が無かったこと、ネットワークの閉鎖性に関しても、前提とは逆に、アメリカの方が日本よりも閉鎖性が高いという結果が得られたことなどによるものと考えられる。

 今後改善すべき点としては、一般的信頼およびネットワークの閉鎖性という、機会コストと関連すると予想される変数に関して、「アメリカの方が日本よりも高い」という前提を支持するような標本を用いることが挙げられる。


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