題目: 遅延報酬時における行動の持続要因について

氏名: 山本卓也

担当教官: 亀田達也


 私たちは日々様々な努力を行っている。それは、その努力の持続の先にある大きな報酬を得たいからである。筋力トレーニングもそういった努力の一つであり、引き締まった体や、強い筋力を得るために行われるのである。しかし筋力トレーニングに代表されるこのような努力は持続させることが難しい。多くの場合、日が経つにつれモチベーションが低下していってしまう。その原因は行動に対しての報酬がただちに与えられないからだと考えられる。人間は予測する能力をもち、予測に基づいた行動の結果を見ることで次の行動のモチベーションとする(Bandura, 1977)が、筋力トレーニングでは行動に対して、筋力や引き締まった体などの報酬がすぐには与えられないために、適切な強化のプロセスが働かず、次の筋力トレーニングのモチベーションへとつながらないのである。

 本研究では、こういった努力のモチベーションを長期にわたって維持し続けていくためにどのような方略があるのか、またそれらの方略はどの程度効果があるのか、について調べることを目的とした。

 予備調査では、お客さんや生徒に対してどのようなモチベーション持続の方略を用いているかをスポーツジムインストラクターや塾講師にインタビューし、それらの方略をもとに本調査の質問紙を作成した。この質問紙は、最近の筋力トレーニングがどのような方略で行われていたかについて提示した24項目にそれぞれどの程度当てはまるかを7点尺度で回答してもらうものである。またそれらの方略がモチベーション持続にどの程度影響を与えたのかを調べるために、その時の筋力トレーニングが何日間持続したかを尋ねた。本調査では計184名の学生に、この質問紙に回答してもらった。

 回答してもらった筋力トレーニングのモチベーション持続方略24項目を因子分析した結果、ギャップ認知方略(自分の現状と理想の体との差を認識する)、集団化方略(友人や仲間とともにトレーニングする)、プロセス確信方略(自分が理想の体に到達するまでにどのようなプロセスを経ていくのかを知る)、の3つのモチベーション維持方略に分けられた。継続日数を従属変数とする重回帰分析を行ったところ、プロセス確信方略がもっとも筋力トレーニング継続日数を説明していることがわかった。

 この結果は、プロセス確信方略が、遅延されている報酬を細分化、明確化することで心理的には比較的即時の報酬の連続におきかえる方略だったからだと考えられる。


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