題目: こんな人とどう付き合いますか: 交換場面における2次情報を用いた他者認知

氏名: 佐藤こゆり

担当教官: 高橋伸幸


 本研究の目的は、これまでシミュレーションや数理解析などにより一般交換を成立せしめるとして提唱されてきた選別戦略を人々が実際に用いているのかどうかを、質問紙を用いて検討することにある。具体的には、一般交換状況、及びSD(社会的ジレンマ)状況やAG(安心ゲーム)状況において採用される戦略を評価レベルと行動レベルで検討した。

 先行研究による戦略の特徴は、相手の行動についての情報(1次情報)のみならず、その相手がどのような人物を相手として行動したかについての情報(2次情報)を用いて、資源の提供相手を選別することにあった。また、最新の研究で一般交換を成立させ得るとされている戦略の特徴は、2次情報を用いて、非協力者に協力する人(All-C)を罰する(資源提供しない)ということである。

 本研究では、一般交換状況においては評価レベルでも行動レベルでもAll-Cを排除するパターンが見られると予測した。それに対し、SD状況やAG状況では評価レベルではAll-Cへの評価は低いかもしれないが、罰にはコストがかかることから行動レベルでは人々は必ずしもそのような戦略を採用していないだろうと考えた。

 質問紙では場面想定法を使用し、シナリオのタイプ3条件(一般交換型、SD型、AG型)を被験者間要因、1次情報・2次情報を操作した状況のタイプ4条件を被験者内要因とする混交要因デザインを採用した。シナリオには、A、B二人の人物が登場する。ここでは、人物Bの行動(Aを罰したか否かor提供したか否か)が1次情報、人物Aの行動(協力したか否かor提供したか否か)が2次情報に当たる。主な従属変数は回答者の人物Bに対する印象評定と行動(罰するか否かor提供するか否か)である。

 分析結果からは、人々が2次情報を用いているということが示唆された。しかしAll-Cの排除については、AG・SD型では予測通りAll-Cへの評価が低い傾向が見られたが、一般交換型では予測に反してAll-Cへの評価が高い傾向が観察された。行動の戦略についてもこれとほぼ一貫した結果を得た。

 予測に反する結果を得た理由として考えられることは、場面想定法では臨場感を持たせる事が困難であるということ、また一般交換型における交換のコストの重みが小さかったということである。今後更なる研究を行うにあたり改善すべきことは、交換の重みを操作するという点であろう。


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