題目: 集団カテゴリーと信頼 ——最小条件集団を用いた実験研究——

氏名: 野刈真愉子

担当教官: 山岸俊男


 本論文では、最小条件集団(Tajfel, Flament, Billig, & Bundy, 1971)と分配者選択ゲーム(Foddy, Platow, & Yamagishi, 2001)を用いた実験から、内集団ひいき的利他行動の行使者と対象者の行動をそれぞれ検討する。分配者選択ゲームとは、分配者(行使者)が自身と被分配者(対象者)の間で報酬分配をする一方、被分配者が内集団分配者と外集団分配者のどちらの分配に従うかを選択するゲームである。

 検討する内容は次の2点である。

 分配者の行動の分析は、内集団ひいき的利他行動が、血縁関係や直接的な互恵的関係のない状況においても生起することを示した。また、それが内集団に対する評価や一体感などに影響を受けずに生起されていることも重要な発見であった。しかし、その行動を説明するのに、内集団ひいきの主たる説明理論である「集団協力ヒューリスティック仮説(神・山岸, 1997)」と「社会的アイデンティティ理論(Billig & Tajfel, 1973; Tajfel, 1982; Tajfel & Turner, 1979 ; Turner, 1982)」のどちらが有力であるかは、実験タスクの構造上、明らかにすることは難しかった。

 被分配者の行動の分析は、内集団ひいき的利他行動の期待によって、内集団分配者が外集団分配者よりも選択される傾向にはないことを示した。ただし、内集団分配者の選択理由のみを分析すると、分配者・被分配者間で所属集団の情報が共有されているか否かによって、傾向に異なりが見られることが明らかとなった。共有されている場合は一般交換システムに基づく互酬性の期待、共有されていない場合は内集団に対する評価や一体感に強く関連するものだった。しかし、それら選択理由の差異が行動に結びつかなかったことに対する説明として、「集団協力ヒューリスティック仮説」と「社会的アイデンティティ理論」のどちらが有力であるかは、分配者同様に明らかにすることは難しかった。


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