題目: 恐怖アピールによる説得と生理的喚起

氏名: 加藤智佳子

担当教官: 亀田達也


 本研究は恐怖アピールと説得効果の関係について検討した。

 先行研究には、恐怖アピールの程度が強いと説得効果が低くなるというものや、その逆に恐怖アピールの程度が強いほど説得効果があるというもの、そして恐怖アピールの程度と説得効果との間には逆U字の関係があるという理論もある。また、説得的コミュニケーションと関連のある心理過程として、自尊心、心理的リアクタンス、説得的コミュニケーションの信憑性がある。

 被験者の態度変化を測定する指標としては、自己評定法と皮膚コンダクタンス反応(SCR)を使用した。

 本研究では、①恐怖アピールが中程度のときに最も態度変化が大きくなるだろう、②SCR反応が大きい人ほど態度変化も大きいのか、③自尊心が高い人ほど説得されやすいだろう、④リアクタンス特性が強いほど説得に抵抗するだろう、⑤説得文を信用した人ほど態度変化が大きいだろう、の5つを仮説とし、合成シャンプーよりも石鹸シャンプーを使うべきという説得内容で実験を行った。

 実験では、被験者を恐怖アピールの程度によって高・中・低群に無作為に割り当て、各条件の被験者に恐怖の程度が異なる画像を見せた。その画像の前後に質問紙で被験者の態度を測定し、事前と事後の差を態度変化量として説得効果を見た。事後の質問紙は、被験者の自尊心とリアクタンス特性を測る尺度や、説得文を信用できたかを尋ねる項目も含んでいた。SCR反応は画像提示中に測定した。

 実験の結果、仮説①については、恐怖の程度が強・弱・中の順に説得効果があるという、先行研究では見られない結果が得られた。これは、各条件の説得内容と画像が本当に高・中・低程度の恐怖を与えるものであったか疑わしかったからだと考えられる。仮説②については、SCR反応が大きいほど態度変化も大きいという結果が得られた。仮説③については、実験直後の測定では、自尊心が高い人ほど説得されやすいという結果が得られた。仮説④については、リアクタンス特性と説得効果について一貫した結果が得られなかった。これは本実験の説得内容が、さほど自由行動を脅かさないものだったからと考えられる。仮説⑤については、説得文を信用した人ほど態度変化が大きいという結果が得られた。

 本研究には説得内容の恐怖の程度や、SCR測定中の被験者の睡眠と周囲の騒音、質問紙の内容に問題があった。今後、この点に注意して研究をすすめる必要がある。


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