卒論題目:Our Traditional Beliefs and Behavior: Their Relationship to Anxiety.

    (我々の伝統の信仰と実践:それらの不安に対する関連)

 

氏名:寺澤 敦

 

指導教官:Alan S. Miller

 

 本研究は、宗教性が失われたと言われる現代日本において、人々がreligious behaviorを実践する要因を明らかにすることを目的とした。過去の研究では、religious behaviorは宗教行動として扱われていたが、日本ではreligious(精神的な)がある特定の宗教信仰や宗教団体を意味しているために、religious behaviorに宗教行為という訳を用いて研究を進めてもreligious behaviorが実践される正確な要因を探ることはできないと考え、本研究では伝統という観点からreligious behaviorを再検討した。

本研究では、religious behavior を“精神的な不安を抱えている人ほど実践しやすい”、“将来は自分以外の外的な要因によって統制されていると考えている人ほど実践しやすい”、“社会的な結びつきが重要だと考える人ほど実践しやすい”という仮説をたてた。前者2つは、内的要因から、後者は外的要因から予測したものである。

これらを検証するため、『伝統に対する考え方についての質問調査』と名付けられた質問紙を作成し、調査を行った。

本研究で用いられたreligious behaviorは因子分析により、宗教に起源を持つreligious behaviorと迷信的なreligious behaviorに分けられ、それらを独立変数とした重回帰分析が行われた。その結果、宗教に起源を持つreligious behaviorにおいては、家族との結びつきが重要であると考える人ほど実践する傾向がみられた。迷信的なreligious behaviorにおいては、不安を抱えている人ほど、将来は外的に統制されていると考えている人ほど、そして、家族以外の社会との結びつきが重要だと考えている人ほど実践する傾向がみられた。また、これらを実践した人に有益な効果をもたらすと信じる人ほどreligious behavior を実践するという一貫した傾向がみられた。

 結果から、本研究は、日本のreligious behaviorを研究する際、宗教的な視点からだけ捉えるのではなく、もっと広く精神的な側面からアプローチすることで、日本人がreligious behaviorを実践することにどのような規定要因が影響しているかを、より明らかにすることが出来るのではないかという視点を示したと言える。


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