題目 夫婦関係におけるコミュニケーションと夫婦関係評価

 

氏名 金田 尚子

 

指導教官 山岸 俊男

 

 本研究の目的は、職業が夫婦関係に及ぼす影響を検討する事である。従来夫婦間には、夫は職業を持ち生計を立てる役割、妻は家事や育児など家庭をまとめる役割といった性別役割が存在していたが、近年は女性の職場への進出が著しくなっており、性別役割が変化してきている。では妻の職業の有無は夫婦関係にどのような影響を与えるのだろうか。また、夫は収入や社会的地位といった、職業資源を得ることが一般的であるが、その職業資源は夫婦関係にどのような影響を与えるのだろうか。本研究では、夫の職業資源が夫婦関係に及ぼす影響と、妻の職業の有無が夫婦関係に及ぼす影響に関して検討した。

 前述した目的を達成するために、質問紙法を用いた調査を実施した。大学教授等に依頼して、学生に両親に渡すように指示し、夫婦それぞれに別々の調査紙を配布した。お互いに見せ合わないように回答してもらったデータを回収した後、夫婦特有のIDを元にどのデータが夫婦であるかを調べ、組み合わせた。分析に用いたデータのペア数は185組であり、夫の平均年齢は482歳、妻の平均年齢は457歳であった。

 分析の都合上夫が民間企業に従事している場合に限られるが、夫の職業資源と夫婦の結婚満足度は正の相関関係にあるという結果が得られた。これは夫の職業資源は高い程、妻に自分の社会的地位も高いのだと思わせるため、妻の結婚満足度が高まり、それに伴い夫の結婚満足度も高まるためであると考えられる。

 一方妻の職業の有無は、夫婦間の性別役割を変化させておらず、結婚満足度を変化させていない。しかし、兼業主婦を持つ夫と専業主婦を持つ夫とでは結婚満足度に影響を与える要因が異なっているという結果が得られた。妻の収入は、僅かであるため結婚満足度に影響を与えていない。また、妻は職業の有無に関わらず、家庭での役割を果たしているため、性別役割は変化していない。しかし、兼業主婦を持つ夫は、自分の職場での成功等を妻が助けてくれたためであると考える事が少なく、職場での出来事が結婚満足度には影響を与えないのに対して、専業主婦を持つ夫は、職場での成功等を妻が助けてくれたためであると考えることが多くなるため、職場での出来事が結婚満足度に影響を与える可能性が得られた。また、夫と同様妻も妻の性別役割を重視している傾向が見られた。日本ではまだ性別分業意識が強いという事が考えられる。


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