題目 上下関係への社会化

 

氏名 中村弥恵

 

指導教官 結城雅樹

 

 本研究では「上下関係への社会化」をテーマに、上下関係の受け入れのメカニズムを検討することを目的とし、具体的には「生徒間の上下関係を初めて意識する時期」、「学年や部活や小学校での経験が、上下関係の受け入れに与える影響」、「上下関係の受け入れの規定因」について、2つの研究によって検証した。

 研究1では、体育系の部活の所属者においては学年があがると上下関係をより受け入れているという学年の効果があったのに対し、文化系の部活の所属者にはそのような学年の効果が見られなかった。また小学校での子供会・スポーツ少年団経験に関しては、経験のない人の方がより学年の効果が現れるだろうと予測していたが、これに反する結果となり、小学校での経験のあった人は学年があがると上下関係をより受け入れていたのに対し、経験のない人には学年の効果がないという結果が得られた。

 研究2では、上下関係の一般的な受け入れ度に、学年も部活も小学校での経験も影響していなかったため、上下関係の受け入れを具体的に表した個別のルールへの賛成度や、上下関係の機能認知に関する項目を分析したところ、学年の影響はやはりみられなかったが、体育系の部活に所属している人の賛成度が高く、「社会に出たら役に立つ」や「けじめや秩序を維持できる」といった上下関係の機能をより認知しているという結果が得られた。また、多くの人が上下関係を中学1年生のときに初めて意識したことも明らかになった。そして、相対的に上下関係を受け入れていた体育系部活の所属者に関して上下関係の受け入れの規定因についても検討した結果、上下関係の機能認知のうち、「部活のために働いておけば結局は自分のためになる」という自己投資的集団貢献観と、「上下関係によってけじめや秩序を維持できる」という集団にとっての利点を強調した貢献観の双方が、上下関係の受け入れを規定するものであることが明らかになった。ただ、研究1では、上下関係の受け入れと自己投資的集団貢献観との間に相関がみられなかったので、上下関係の受け入れの規定因についてはさらに検討が必要だろう。

 個別のルールへの賛成度や上下関係の機能認知も含めた総体を「上下関係の受け入れ」と考えると、これら2つの研究から、上下関係の受け入れには「体育系の部活」という社会化のエイジェントが大きく影響しているのではないかと結論できる。

 


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