題目  男の子が減ってきている?−出生性比の時系列的変化における社会心理学的研究—

 

氏名  沙織

 

指導教官  山岸 俊男

 

  1970年代後半から現在にかけて、男の子の出生率の減少が広範な国々で起こっている。日本の全出生性比も調べてみたところ、日本も同様に1970年代から減少傾向が見られた。その原因については、環境問題が話題になっている世相を反映して、近年は環境ホルモンとの関係を調べたものが多い。

  本研究の目的は出生性比が環境ホルモンなど生物学的要因以外の社会的な要因と関係していないかを調べることにある。その要因を特に「母親の年齢」、「子供の出生順位」、「地域差」、「死産の性比」の4つに絞り、出生性比との関係を日本において調べた。

  出生性比、死産性比のデータを分析する際は厚生省大臣官房統計情報部による人口動態統計を用いた。また、扱った範囲は日本で男児の出生率が減少してきた1960年代後半から現代にかけてである。

  結婚・出産の高齢化という社会的変化の影響を調べるために「母親の出産年齢」と「子供の出生順位」と出生性比の関係を調べたが、あまり関係がなかった。環境ホルモンによる出生性比への影響を調べるため1970年から現代にかけて出生性比を都道府県別に調べてみたところ、日本全体の出生性比の変化と同じように減少傾向を示した県とそうでない県とに分かれる「地域差」が見られた。しかし、環境ホルモンから予測される工業地域における男児出生率の減少は見られなかった。また、死産性比を調べてみたところ、1969年より男児の死産性比増加傾向が見られた。そこで1990年代の死産性比を1970年代の死産性比と同じと仮定したときの1990年代の出生性比を計算してみたところ、確率的な変動以上に実際の1990年代の出生性比より男児の出生率が増加した。このことは死産における男児比の増加が、男児出生率の減少を起こす要因の一つであると示唆する結果であろう。

  今後の出生性比だが、本研究の死産性比と出生性比を調べた結果から、もっと出生性比と死産関連の研究がなされる必要があるだろう。死産関連の要因として、近年急速に進歩しつつある遺伝子診断と関連を持つ出生前診断との関係を見ることも有効であると思われる。

 


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