題目: 自他殺の現状  − 年次推移を主眼とした状況変遷の考察 −

氏名:曽我 央

指導教官:山岸俊男教授


 

要旨:

 今年は自殺や殺人の報道が多かったように思える。元X JAPANギタリストのヒデさんの自殺や毒物カレー事件などの殺人などがあった。以前と微妙に異なり、自殺したのがその名を世にとどろかせた人間であったり、殺人が簡単に行われたりしているところをみると、「自殺や殺人が何か変わってきているのではないか」という直感が沸いた。同時に、「惜しまれる人までが自殺してしまう世の中なのか?」「いつどこで殺されてしまうかわからないような世の中なのか?」と悲観してしまった。そんな直感や悲観から、今の自他殺はどうなっているのかを調べてみた。

 自殺は1950年から1995年にかけて以下のような変化をしていた。年齢層別ではどの年齢層でも自殺率が低下していた。その中でも20代と60代以降の自殺率の低下が著しい。地域別に見ると、1970年を境に都市地域よりそれ以外の地域の方が自殺率が比較的高くなってきた。1960年は近畿・東京といった地域がより高かったのだが、1985年は東北・北海道・九州がより高いのである。男女別の視点から眺めると、1970年以降男性は微妙に自殺率上昇へ、女性は低下へ向かっている。また、不動の事実として男性の方が一貫して自殺率がより高かった。

 殺人は全体で1970年と1995年を比べると、殺人率が半減していた。その様子を細かくみると、以下のようであった。年齢層別では20代で著しい殺人率の低下が認識できた。グラフにしてみると、殺人率の最高点が少しずつ右に動いているような感があった。このことを分析すると、1965年の20〜24歳の世代に特に強い世代の効果があった。地域別では東京以外はどの地域も殺人率の低下の一途をたどっていた。男女別でも男女とも半減しており、どう見ても低下していることがわかった。

 自殺・殺人ともに年齢層別の変化が大きく、これがもっとも強い変化の要因であると考えた。自殺は20代でのピークが見られる「ふた山パターン」から諸外国と同様な高齢ほど自殺率が高い「右上がりパターン」に変化した。男女比などを加味し、特殊パターンから一般パターンに変化したと結論付けた。殺人は20代がピークとなるような一般パターンから各年齢層間での構成比の格差が小さい特殊パターンへと変化したようである。


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