題目:「シルバーシート」の利用に関する調査

氏名:飯田 知恵子

指導教官:山岸 俊男 教授


 「札幌市の地下鉄ではシルバーシートに対象外の人がほとんど座っていない」という直感的な観察からこの調査は始まった。本論文ではまずこの観察が本当かどうかを札幌市営地下鉄の調査によって確認し、さらになぜそのような状況なのかを他都市との比較により検討した。

 札幌市営地下鉄における調査では、車内がすいている場合に乗客はまず普通座席に着席し、混雑につれて徐々にシルバーシートにも座るようになるが、座る人の大部分は対象者であり、非対象者はほとんど着席していないという結果が得られた。つまり、上述の直感的観察が確認された。

 その要因を考えると、マークや座席の形態といったシルバーシートの表示そのものの要因と乗車距離や混雑度といった状況的要因という大きく2要因があげられた。そこでこれらの2要因を他都市との比較によって検討した。まず表示に関して首都圏における調査を中心に検討した。その結果、名称やマークの形といったもので違いは見られなかったが、シルバーシートと普通座席の色が違うかどうかと、それに伴うシルバーシートの目立ちやすさというのは影響があるようであった。詳しく述べると、座席の色が異なったり、座席の色が異なることでシルバーシートが目立ちやすい場合は非対象者が座りにくいようであった。一方、状況的要因は、札幌市営地下鉄の状況と比較的似ており、乗車区間が短くすいていることの多い仙台市営地下鉄と比較することで検討した。しかし、仙台市の調査では対象者ではなく非対象者がシルバーシートに着席しているという結果が得られた。したがって、状況的要因はあまり大きく影響していなかった。

 以上の調査結果に基づき、なぜ札幌市営地下鉄では非対象者がほとんど座っていないのかという考察をした。その要因を札幌市民の特性、いわゆる市民性だと考えるのは市営バスやJR線において非対象者が座っている様子がよく見られることから推測すると妥当ではない。他の要因としては、札幌市営地下鉄特有の「専用席」という名称が他都市と唯一大きく異なる点であり1つの要因と言える。また、シルバーシートと座席の色が異なり非常に目立つことも、他都市の調査結果からもわかるように、その一要因であると判断される。「専用席」という名称を含めた表示の効果とさらに比較的乗車距離が短く混雑していることが少ないという状況的要因が複合的に影響して、シルバーシートに非対象者がほとんど着席しないと結論づけた。


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