題目  社会的交換場面における協力傾向と外見的魅力

氏名  山本 幸恵

指導教官 山岸 俊男 教授


 本研究は、社会的交換場面において自分の外見的魅力が相手にどのような影響を与えるかについて調べると共に本人に与える影響についても調べることで、外見的魅力が社会の中で持つ意味について双方向的視点に立って考察を行うことを目的としている。

 社会関係の中には様々な形態があるが、結婚市場や労働市場における外見的魅力の持つ効果については多くの研究がなされてきている。しかし、これらの研究は外見的魅力が相手にどのような影響を与えるかのみを調べた一方向的な研究である。外見的魅力が相手に与える影響と共に、自分自身の行動や個人特性に与える影響についても同時に調べた双方向的な視点に立った研究はまだ少ない。社会は人と人との相互関係で成り立っているので相手と自分という双方的視点を取り入れることが重要だろう。Mulford, Orbell, Shatto, & Stockardの研究では双方向的視点を取入れることで、女性に「premium to beauty(美のプレミア)」が存在することを明らかにした。そこで本研究でも双方向的な視点を取入れ、外見的魅力が他者との付き合いの中で持つ影響について調べるための実験を行った。本研究では実験パラダイムとして囚人のジレンマを使用し、魅力の高い人が協力者だと思われやすいという魅力のハロー効果が存在するのかを調べると共に、外見的魅力の高低によって本人の協力傾向に違いがあるのか、また、個人特性に違いがあるのかについて分析を行った。

 その結果、魅力の高い人は協力者だと思われやすいという魅力のハロー効果が働きやすいのは、相手に対する情報が少ない時であり、コミュニケーションを十分に取れる状況ではそれ程強い効果が見られないことがわかった。また、外見的魅力が本人に与える影響については、女性にのみ外見的魅力と個人特性に関係が見られたが、協力傾向に差は見られなかった。

 さらに本実験とよく似た実験の再分析を行い、外見的魅力の高い人が有利になるのはなぜかについて検証を行ったところ、外見的魅力の高い人が有利になるのは、相手に選ばれやすく協力してもらえるためであることが示唆された。また、外見的魅力の高い人と低い人とでは、お互いに相手が分かっている状況で取引を行う時に、協力傾向に違いがある可能性が示された。このように双方向的視点を取入れることで、外見的魅力が持つ効果について興味深い知見を得ることができた。


卒業論文題目一覧