題目  他者の信頼性判断―外見的魅力と一般的信頼の効果―

氏名  佐々木彩乃

指導教官 山岸俊男教授


 本研究は、他者の信頼性判断の正確さに関わる一般的信頼と外見的魅力の効果についての探索的研究である。

 他者がどの程度信頼できる人間かつまり他者の信頼性は判断しにくいが、これを正確に判断することが重要になる状況がある。その状況とは@未知の相手と社会的交換を行うA相手の意図についての情報が十分に得られないB機会コストが大きい状況である。先行研究で、このような状況では人は基本的には善良であるという信念を持つ人(高信頼者)は低信頼者よりも正確に信頼性を判断できることが示されている。この正確さの違いは何にあるのか。写真を用いた先行研究の結果から、低信頼者は高信頼者より外見的魅力を信頼性と結びつけて判断する傾向が強い可能性が示唆された。そこで「高信頼者は、低信頼者よりも他者の信頼性判断が正確である」という知見を再検証し、さらに実際に対面状況で他者の信頼性判断における他者の外見から受ける影響に特に注目し、高信頼者と低信頼者との他者の信頼性判断における手がかりの違いについて研究することを目的とした実験を行った。
実験では囚人のジレンマゲームを用いた。被験者は相手の外見的魅力、相手への好感を回答した。信頼の水準により高・中・低の3群に分け、分析を行った。高信頼者は他の2群より、相手の行動を正確に予測しており、他者の信頼性を正確に判断する能力と一般的信頼との関係が示唆された。これは先行研究と一致する。また高信頼者は他の2群より、行動予測において相手の外見的魅力に影響されない可能性があることが示され、写真実験の結果と一致した。だが実際の行動とその人の外見的魅力に関係はなかったことから、外見的魅力は信頼性の適切な示標ではなく、相手の外見と信頼性を短絡的に結びつけるかが予測の正確さに影響すると考えられる。また、外見を手がかりとするかは情報に対する敏感さに関係すると考えられる。

 さらに信頼の水準に関わらず、初対面の相手に対する好感には相手の外見的魅力が強く影響していた。また高信頼者は相手への好感を相手の行動予測と結び付けないが、中・低信頼者は結びつける可能性があることが示された。よって、相手の外見と相手への好感を相手の行動予測と結び付けるかも予測の正確さに関わる可能性が考えられる。

 現代のように人々の流動性の高い社会で他者を正確に判断する能力は重要である。これを考える上で本研究は意味のあるものだろう。


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