題目:「行動レベルにおける False Consensus 効果について」

氏名:長濱 宏

指導教官:山岸俊男教授


 False Consensus Effect(FCE)とは、「人々は自分の行動や判断は比較的一般的で適当なものだと考えるが、そうでないものは一般的ではなくて不適切で逸脱したものだと考える傾向」であり、自分の行動や判断の社会に対しての一般性の基準となるのは自分自身である(個人が軸となるFCE)。しかし人々は、自分自身のみを基準とするのではなく、自らの知人等の行動や判断を一般的なものと考え、その結果自分の行動や判断の一般性の基準となるのが自分の知人等となることも考えられる(選択的接触が要因となるFCE)。先行研究より、この2つの効果は既に確認されており、かつこれらの効果が起こる質問項目とそうでない質問項目があることも明らかになっている。本研究ではその2つの効果に関して、どのような質問項目の時に「個人を軸としたFCE」、「選択的接触が要因となるFCE」が起こるのかを検討した。

 質問紙では大学生の行動に関する質問項目を10項目用意し、(1)調査対象者自身がその行動を選択しているのか、それとも選択していないのか、(2)北大生全体でその行動を選択している人の割合、選択してない人の割合、(3)調査対象者にとって親しい北大生を10人名前を列挙させ、(4)その10人のうち、その行動を選択している人の人数、を順に調査対象者に回答させた。

 分析の結果、5項目で「個人を軸としたFCE」、「選択的接触が要因となるFCE」が共にみられた。また他の5項目では「選択的接触が要因となるFCE」がみられ、「個人を軸としたFCE」はその傾向がみられたものの、統計的には有意に異ならなかった。「選択的接触が要因となるFCE」、「個人を軸としたFCE」が共に起こった項目に共通して言えることとして、(1)その行動を選択している人の割合が高い、(2)全体推測に対する確信度と全体推測値との間に相関がみられる、の2点が挙げられる。(1)の記述が意味することとしては、「論理的情報処理の要因(自らの行動の原因を状況または個人に帰属するかにより、consensusの推測が異なる)」があげられる。(2)の記述の意味することとしては、「個人を軸としたFCE」が起こることの、副次的な作用と考えることができる。


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