題目:「健康おたくとはどんな人々か?−健康意識とリスク回避傾向の関係について−」

氏名:萩原 環

指導教官:山岸俊男教授


 健康ブームといわれる昨今、さまざまな健康商品が出回っている。中には、本当に効き目があるのかどうかが疑わしい商品も数多く見られるが、それにも関わらず実際に購入する人は後を絶たない。本研究は、このような「うさんくさい」健康商品に飛びつくのがどんな人たちなのかを明らかにしようとするものである。

 飛びつく人たちの性格特性として注目したのは、リスクに対する態度である。効果があるかどうかわからないものを買うのは一種の賭けであり、直感的に考えると、飛びつくのは損をするというリスクを恐れない人のように思える。しかしそれとは逆に、「病気が治る可能性を捨てる」というリスクを避けるために商品を購入するという考え方もできる。人々の健康意識が高まっている現在では、後者の方がより一般的な説明だといえるのではないだろうか。そこで、「リスク回避傾向の高い人ほど健康商品に飛びつきやすい」という仮説を立て、質問紙調査によってこれを検証することを試みた。

 調査は30代以上の男女150人を対象に行い、リスク回避傾向と健康意識に関する質問に回答してもらった。また健康雑誌から3種類の健康商品あるいは健康法(アロエ・プロテイン・ダイエット、手と足握手、塩入り枕)に関する記事を抜粋したものを読んでもらい、その商品にどの程度関心を持ったかを尋ねた。

 回答を分析した結果、リスク回避傾向と全体としての飛びつきやすさの間に正の相関が見られたので、仮説は支持されたといえる。しかし、商品ごとに見ると、ダイエットでは仮説を支持する傾向が確認されたのに対し、手と足握手と枕でははっきりした傾向が見られなかった。また、この商品間の違いは、男性よりも女性において顕著に見られた。この違いは、商品の効能の違いによるものだと考えられる。手と足握手と枕には、血行を促進する効果があるとされている。しかし血行を良くする方法は他にもあるので、あえて「うさんくさい」ものに飛びつく必要はない。一方ダイエットの場合、「他の方法でだめだった人もこれなら大丈夫」というのが売り文句である。従って、多少疑わしくても、痩せたいなら他に選択肢がないので買わざるを得ない。このような商品間の違いが、結果に影響したと考えられる。


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