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社会科学実験研究センター(CERSS)は、先端的な社会科学実験を展開するための日本で唯一の専門機関として、北海道大学の戦略的研究展開を担う創成科学研究機構のもとに、平成19年4月に発足しました。現在は北海道大学文学研究院人間科学部門行動科学講座を中核とし、北海道大学院経済学研究院教育学研究院などと連携し、先端的な社会科学実験を展開する連携組織として研究・教育活動を展開しています。

CERSSは、1)社会科学における実験研究のための手法の開発と普及を通した、社会科学の実験科学化の推進、2)社会科学における実験研究の本格的導入による、人間科学と社会科学の双方に対して共通の対話可能な研究環境の提供、3)人間・社会科学における実験研究のための国際実験ネットワークの構築により、世界各国の拠点を結ぶ国際実験を実施、4)実験研究を通して人間科学と社会科学とを結びつけるための研究活動の実施と、その成果を国際的に発信することのできる若手人材の育成を理念としています。

これらの理念のもと、文部科学省特定領域研究「実験社会科学-実験が切り開く21世紀の社会科学-」の中核組織として、また文部科学省最先端研究基盤事業のひとつである「心の先端研究のための連携拠点(Web for the Integrated Studies of the Human Mind: WISH)」の連携組織として、カッティングエッジの研究を行うとともに、若手人材の育成、教育・啓蒙活動を行ってきました。こうした連携活動を促進するため、東京大学進化認知科学研究センター京都大学霊長類研究所京都大学こころの未来研究センター玉川大学脳科学研究所との間に、共同研究・共同教育ネットワークが作られています。同時に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校行動文化進化センターや、インディアナ大学認知科学プログラムなど、海外の主要な研究拠点との間に、人材交流を含む協力体制を構築しています。また、学術会議心理学・教育学委員会「心の先端研究と心理学専門教育分科会」および「実験社会科学分科会」とも連携しています。こうした活動を通じて、心理学、脳科学、霊長類学、行動・進化生物学、経済学、政治学、法学を含む多様な関連領域における先端研究を接合するうえで、本センターは中核的な役割を担っています。

社会科学実験研究センター概要

はじめに:実験社会科学を取り巻く世界の潮流と社会科学実験研究センターの役割

21世紀初頭以来、心理学はもとより、経済学、政治学、人類学、社会学、法学を含む広範な社会科学領域において、「社会科学実験」の重要性が世界的に認識されつつあり、「人間・社会科学統合」に向けての理論的整備が、旧来の学問体系を超えて急速に進行してきた。こうした動きは、2002年のノーベル経済学賞が実験経済学・行動経済学に与えられたことを端緒に、2005年、2009年にも実験手法を用いている研究者に授与されていることからも明らかである。さらにCalTech、 UCLA、University of Michigan、Harvard Universityなどのアメリカの主要大学、University of Zurich、Max Planck Institute、London School of Economicsなどのヨーロッパの主要大学・研究機関においても、経済学・人類学部門に大規模な実験研究施設を開設する動きが急速に展開している。同時に、それぞれの国際拠点間での社会科学実験研究のネットワークが整備されつつあり、研究者・PDの交換を含む人的交流も盛んになりつつある。こうした動きは、単に実験という社会科学において新規な研究手法の普及に留まらず、ゲーム理論を共通の概念軸に、「人間・社会科学統合」に向けての理論的整備が、旧来の学問体系を超えて、急速に進行しているという文脈から生じている。こうした流れから、現在、自然科学とも真に交通可能な人間・社会科学の姿が具体的な像を結び始めているといえよう。

こうした世界的潮流の中、先端的な社会科学実験を展開するための日本で唯一の専門機関である北海道大学社会科学実験研究センターは、2007年4月に、学内共同教育研究施設(2011年度までの設置時限付きセンター)として発足した。本センターは、時限完了を控えた2011年10月に創成研究機構評価委員会による審査を受け、極めて高い評価のもと、同年12月に、2012年度からの5年間の更新が全学的に決定された。また、2015年4月1日、北海道大学の全学的な組織再編により、本センターは、新たに「学内共同研究施設」に変更されると共に、設置時限が廃止された。

以下ではその沿革を概観する。

センター概要

  1. 沿革
    1. 萌芽段階: 21世紀COEの成果とその発展的継承

      実験社会科学を取り巻く世界的な流れの中で、北海道大学文学研究科・教育学研究科(現:教育学研究院)の教員から構成される21世紀COE研究拠点「心の文化・生態学的基盤」は、5年間(2002年度-2006年度)の活動を通して、アジアにおける社会科学実験の最中核拠点として、第一線の国際的地位を確立した。以下では、社会科学実験研究センター設立の萌芽段階にあたる、21世紀COE研究拠点(以下では21COEと略記)の研究教育活動について述べる。

      2002年秋、「心の文化・生態学的基盤」に関する拠点形成計画が、21COEとして採択された。2003年4月には、実験研究のための施設が北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟6階に完成し、本格的な活動が開始された。  CEFOM/21(Center for the Study of Cultural and Ecological Foundations of the Mind, a 21st Century Center of Excellence)は、2002年度に採択された人文科学分野における全国で20のCOE研究拠点の中でも、その尖鋭さの面で際立っていた。同拠点はいわゆる「・・・の総合的理解」といった総花的な研究・教育のあり方を求めるのではなく、変革期にある人間・社会科学の今後50年の方向を定めることになると考えられる最も深く困難な問題――人間の社会を可能としている心のメカニズムの解明――を正面からとりあげ、それらの問題に全力を集中するという研究戦略をとった。20世紀後半を支配した社会科学におけるタブラ・ラサの神話が崩壊しつつあるなか、科学的な研究成果にもとづく新たな人間観の構築こそが、これから生まれる新たな社会科学に最も強く求められている。CEFOM/21は、様々な研究を通して、この新たな科学的人間観構築のために必要とされる科学的な基礎データの提供の実現を目指した。

      2002年秋の拠点発足以降、研究論文数は急激に増加した。この傾向は、国際誌のみに限った研究論文数でも同様であった。研究論文数の増加と並行して、研究の国際的インパクト(ISIによる国際研究誌上での被引用数)に関しても2002年以降、年を追うごとに増加した。例えば、同拠点リーダーであった山岸俊男教授の論文の国際的インパクト(被引用数)は、人文系他19拠点のリーダーの合計の2倍以上に達し、他を凌駕した。また、CEFOM/21の発信する論文は、Journal of Personality and Social Psychology やJournal of Experimental Social Psychologyなどの社会心理学系の学術誌、Psychological ReviewやPsychological Bulletinなどの心理学一般の学術誌のみならず、American Sociological ReviewやAmerican Political Science Reviewなどの社会科学系の学術誌、さらにはNatureやScienceなどの自然科学系の学術誌掲載の論文にも引用された。2005年には、非人文科学系学術誌からの引用が全体引用の約半数を占めるに至った。

      同拠点では、事業推進担当者の第一線の研究活動に若手研究者がチームの一員として積極的に関与していくことで、研究能力を育成する教育を行った。加えて、研究成果を国際的に発信していくための能力をもつ若手を育成する教育を展開した。具体的には、国際水準の研究を指導するとともに、研究成果の海外学術誌への投稿・海外学会等での報告・COE国際シンポジウム・ワークショップ等での発表を奨励し、そのための人的援助(外国人教授およびポスドク研究員の採用、および彼らによる英語による教育)および経済的援助(国際学会での発表にかかる旅費を補助)を実施した。その結果、若手研究者による論文数は、総数、第1著者の場合のみ、および国際誌掲載のみのいずれの場合も2002年以降急激に増加した。さらに、若手研究者による国際的インパクトも年々増加し、2005年においては、他の人文系19拠点リーダーの総数を越えるほどであった。このことは、同拠点の若手研究者が大きな国際的インパクトを持ちえる研究者として成長したことを示している。

      拠点全体としての研究成果の一部は、「社会集団の論理と実践-互恵性を巡る心理学と人類学的検討」(煎本孝・高橋伸幸・山岸俊男(編)、2007年、北海道大学出版会)、「現代文化人類学の課題-北方研究から見る」(煎本孝・山岸俊男(編)、2007年、世界思想社)、“Cultural and Ecological Foundations of the Mind” (M. H. B. Radford, S. Ohnuma. & T. Yamagishi (eds.), 2007, Hokkaido University Press) などの著書としても刊行された。

      同21COEは2007年3月をもって終了したが、日本学術振興会の審査委員会から、「設定された目的は十分に達成され、期待以上の成果があった」というA評価を得たと共に、21COE事業全体の事後総括の中で「拠点形成の組織的・戦略的なシステムのモデル的なプログラムの事例」としてとりあげられるに至った。

    2. 社会科学実験研究センター設立

      上述のようにCEFOM/21は大きな成果を収め、北海道大学は2007年までの時点で、アジアにおける社会科学実験の最中核拠点として第一線の国際的評価を得るに至った。同年3月の21COEの終了を控え、同分野における北海道大学の国際的評価を一層確実なものとし、その役割をさらに発展させるために、ソフト・ハード両面のインフラストラクチャーの整備が必要であるとの認識が学内で共有された。その結果、これらのインフラを提供する土台として、社会科学実験研究センターの設立が検討された。 2007年2月、北海道大学社会科学実験研究センター設置準備委員会が正式に発足し、同月、設置が承認され、同年3月、同センターの規程及び運営委員会規程が整備された。同センター規程第2条の規定には、「センターは、北海道大学(以下「本学」という。)の共同教育研究施設として、社会科学実験に関する研究を行うとともに、社会科学実験分野における人材の育成、研究成果の国内外への発信、及び国内外の研究拠点との連携の強化を促進することにより、社会科学実験に関する教育研究の進展に資することを目的とする。」と明記されている。 以上の経過を経て、2007年4月、先端的な社会科学実験を展開するための日本で唯一の専門機関である、北海道大学社会科学実験研究センターが、学内共同教育研究施設として発足した。21COEによる教育研究資産を継承しつつ、1)社会科学実験に関する研究の推進、2)社会科学実験分野における人材の育成、3)研究成果の海外への発信、4)海外の研究拠点との連携の強化が、本センターの達成すべき目的である。こうした社会科学全般にわたる研究・教育体制を構築するために、構成員は、文学研究科、教育学研究院、経済学研究科、法学研究科、公共政策大学院の文系全部局から兼務教員が配され、山岸俊男教授(文学研究科)がセンター長に就任した。

    3. 2011年度までの社会科学実験研究センター

      2007年4月の発足以来、社会科学実験研究センターは、上記の4つの目標を達成するために、以下に挙げる複数の機能を担ってきた。

      1. グローバルCOEプログラム「心の社会性に関する教育研究拠点」(2007年度-2011年度)を展開するための教育研究インフラの提供

        社会科学実験研究センターは、グローバルCOEプログラム(以下ではGCOEと略記)「心の社会性に関する教育研究拠点」(2007年度-2011年度)の獲得に大いに資すると共に、GCOEを国際的に展開するためのさまざまな教育研究インフラを提供した。同GCOEとセンター活動とは密接に関わり、そこから多くの教育研究の成果が生まれた(国際的インパクトのある研究の展開、国際的発信能力のある若手の育成)。

      2. 社会科学実験に関する研究を推進するための大型外部資金獲得のための受け皿

        後述するように、社会科学実験研究センターは、GCOEに加え、特定領域研究「実験社会科学-実験が切り開く21世紀の社会科学」(2007年度-2012年度)、最先端基盤研究事業(2010年度-2012年度)など、各種の大型外部資金を獲得するための受け皿としての機能を果たしてきた。

      3. 海外主要拠点との連携を通じた国際的な実験ネットワークの構築

        社会科学実験研究センターは、経済学、政治学、法学、社会学など広範な社会科学の諸分野との協働を推進すると同時に、進化心理学研究の世界的中心として知られているカリフォルニア大学サンタバーバラ校進化心理学センターをはじめとする、海外主要研究拠点(スタンフォード大学社会科学研究所、UCLA行動・進化・文化センター、コーネル大学経済社会研究センター、インディアナ大学認知科学プログラム等)との拠点レベルでの連携強化を進めた。

      4. 学内の研究者・大学院生を対象とする施設提供・技術供与・教育展開

        本センターは学内共同教育研究施設として、学内の研究者・大学院生を対象に、各種の社会科学実験を行うための施設提供、技術の供与、教育展開を行った。

      なお、山岸俊男教授(文学研究科)の定年に伴い、2011年4月より、亀田達也教授(文学研究科)が社会科学実験研究センター長に就任した。
    4. 社会科学実験研究センターの更新

      本センターは2011年10月に創成研究機構評価委員会による審査を受け、極めて高い評価のもと、同年12月に、2012年度からの5年間の更新が全学的に決定された。以下にその概要を述べる。

      2011年7月、創成研究機構より本センターの評価にかかる委員会からの依頼により、8月下旬に書類にて自己評価を提出した。さらに9月、委員長をはじめ本学外の外部委員が過半数を占める評価委員会が招集され、そこでプレゼンテーションを行った。その結果、「本センターは広い領域の社会、人文科学を融合し、人間の社会、経済、文化と心に迫る新しいパラダイムを追求し、設置期限内における4つの達成計画全てにわたり、それぞれ注目すべき成果が得られている。まだ予備的な結果もあり、個人を対象とする実験の成果を集団の行動や特性に結びつけるには、いま一段の飛躍が必要であるが、今後の研究によりすばらしい成果が出ると期待される。」とのコメントの上、最高のS評価が得られ、「創成研究機構評価委員会としては、本センターで実施されている研究の継続を期待する。」と結ばれている。

      この評価委員会の評価調書を受け、2011年11月に本センターの将来計画を作成・提出し、翌年1月の教育研究評議会での審議・了承後、同月の役員会において正式に、2012年度からの5年間の更新が措置された。

      2012年度及び2013年度には、『卓越した大学院拠点形成支援補助金』(SEFM)を受け(2012年度53,820千円、2013年度19,712千円)、その運用に際し中心的な役割を担った。

      なお、亀田達也教授(文学研究科)の転出に伴い、2014年10月より、結城雅樹教授(文学研究科)が社会科学実験研究センター長に就任した。

    5. 社会科学実験研究センターの時限撤廃

      2015年4月1日、北海道大学の全学的な組織再編により、当センターは、従来の「共同教育研究施設」から新たに「学内共同研究施設」に変更されると共に、設置時限が廃止された。

  2. センターの理念

    社会科学実験研究センターは、以下の事項を理念とする。

    • 社会科学における実験研究のための手法の開発と普及を通して、社会科学の実験科学化を推進する。
    • 社会科学における実験研究の本格的導入により、人間科学と社会科学の双方に対して共通の対話可能な研究環境を提供する
    • 人間・社会科学における実験研究のための国際実験ネットワークの構築を進め、世界各国の拠点を結ぶ国際実験の促進をめざす。
    • 実験研究を通して人間科学と社会科学とを結びつけるための研究活動を行い、その成果を国際的に発信することのできる若手人材を育成する。
  3. センターの役割

    社会科学実験研究センターの主たる役割は、本学の学内共同研究施設として、学内外の研究者を対象に、社会科学実験研究のための施設提供と技術供与を行うことを通じて、以下の研究・教育目標の達成に寄与することである。

    • 社会科学実験の国際拠点として、先端的研究を展開し、研究成果を国際発信する。
    • 社会科学実験の中心として、他大学の研究者との協力のもと、若手研究者を育成する(博士研究員・リサーチャーの受け入れ、ワークショップの開催等)。
    • 社会科学実験の論理と実践に関する大学院共通授業を展開する。
  4. 本学における位置づけ
    1. 中期目標・中期計画における位置づけ

      北海道大学の第一期中期目標・中期計画(2004-2009年度)では、人間・社会統合科学が研究重点領域として構想された。同時に、「旧来の学問体系を越えて新たな学問領域の創生を果たすために、複合的学際的領域における世界的研究拠点形成の核となりえる研究の推進」が目標とされた。21COE「心の文化・生態学的基盤」を継承・発展させ、GCOE「心の社会性に関する教育研究拠点」の基盤を提供する形で、社会科学実験に関心をもつ文系5研究科・部局の研究者を結集した本センターは、こうした第一期中期目標・中期計画の理念と明確に関連していた。

      社会科学実験研究センターには、その発足以来、第一期中期目標・中期計画に沿う形で全学的な支援が行われてきた。その支援の中心は、人文・社会科学総合教育研究棟6階に実験研究のための施設が確保されたこと、全学運用教員制度による教員の戦略的配置により同センターの運営に必要とされる人件費等が措置されたこと、の2点である。現在、本センターはこうした全学的支援を背景に、GCOE拠点にインフラを提供し、拠点形成に参加する文学研究科、教育学研究院、経済学研究科等の諸組織での大学院教育の高度化と部局横断的な若手研究者育成プログラムを強力に推進してきた。

      さらに、第二期中期目標・中期計画(2010-2015年度)では、「研究水準及び研究の成果等に関する目標を達成するための措置」として、「基礎領域における研究を持続的に推進するとともに、(中略)実証型・フィールド型の研究や先端融合領域の研究を重点的に支援する。」、「研究成果を、国際的に評価の高い学術誌や著書、国際学会・シンポジウム等に積極的に発表する。」としており、社会科学実験研究センターは、教育研究活動の概要(p.11〜13)で述べるように、着実にこの目的に沿った活動を果たしてきた。また、第二期中期目標・中期計画では、研究実施体制について、「「創成研究機構」において、本学の研究戦略に基づき、附置研究所、共同利用・共同研究施設、学内共同利用研究施設間の連携を進め、共同研究プロジェクトを機動的に推進する。」としており、本センターも、その一つとして明確に位置づけられている。

      2010年からは、文部科学省の最先端研究基盤事業の連携拠点として、京大をはじめとする心理学系研究拠点とともに「心の先端研究のための連携拠点(WISH: Web for the Integrated Studies of the Human Mind)構築」を推進している。他分野・他大学の研究者との間で先端的な共同研究体制を構築するという本センターの方向性は、「他大学等との連携による効果的な共同研究を推進し、全国に(また世界に)開かれた研究拠点としての地位のより一層の向上を図る。」という第一期中期目標・中期計画の、また、「他大学及び諸研究機関と効果的な連携研究を推進する。」という第二期中期目標・中期計画の理念と整合する。

      第三期中期目標・中期計画(2016-2021年度)においても、全学的な研究水準及び研究成果に関する目標-「持続可能な社会を次世代に残すため、グローバルな頭脳循環拠点を構築し、世界トップレベルの研究を推進するとともに、社会課題を解決するためのイノベーションを創出する。」-の達成に貢献していく。本センターもこの目標に呼応し、「人文学・社会科学の中心的拠点として、当該領域の最先端の研究を牽引し、異分野融合研究を推進する。」に、人文・社会科学から取り組む。また、本学では研究目標として「異なる視点を持つ研究者の知のネットワークを形成し、新たに国際共同研究を45件以上展開するなど、グローバルな頭脳循環のハブとして研究を推進する。」と唱っている。学内共同利用研究施設を有する当センターでは、「学内共同利用施設として、幅広い国際共同研究を支援し、国際共同研究を促進する。」の一環として、社会科学における国際共同研究のハブとしての機能を強化する。加えて、若手人材育成面でも、本学では、「創造的な研究を自立して進めることができる優秀な若手研究者を育成する。」という目標の下、「若手教員の継続的なキャリア形成支援のため、本学がこれまで培ってきたテニュアトラック制度をいかし、人文社会科学系分野の育成プログラムの充実、外国人教員への支援策等を盛り込んだ新たな育成制度を実施する。この制度により、テニュアトラック教員を15名以上採用し、育成する。」という目標を掲げている。当センターは、ここにある人文社会科学系分野の育成プログラムの充実に資するべく、「人文社会科学系分野を中心とした育成プログラムの充実を図る。具体的には、若手研究者の積極的な海外派遣や海外研究者との共同研究の推進、若手育成のためのセミナーや顕彰などを行う。」、及び「若手研究者の海外派遣は、短期だけでなく、中長期の派遣もできる限り可能になるような支援策を講じる。」と踏み込んだ表現で若手研究者育成を前面に押し出していく。さらに、第三期には、「大学の教育研究活動の成果を活用し、地域・社会の活性化、課題解決及び新たな価値創造に貢献する。」という社会貢献や地域連携についても、当センターは「地方自治体と連携し、政策提言等を行うのみならず、政策提言に必要となる基礎データの収集等の段階からニーズに対応した意見交換を推進する。」という新機軸を打ち立てている。

    2. 創成研究機構の一組織としての位置づけ

      2009年4月、北海道大学に創成研究機構が設置された。創成研究機構は、「先駆的・融合的学問領域の創成」、「研究成果の社会還元」等を目的に、旧来の創成科学共同研究機構が進めてきた大型の競争的資金によるプロジェクト研究の実施と研究成果の実用化・事業化に向けた活動に加え、学内の附置研究所・研究センターの効率的な運用を目指す組織である。社会科学実験研究センターは、同機構を構成する組織の1つとして位置づけられている(図1 参照)。

      なお、全学的な組織再編により、2015年4月1日より、センターの時限が廃止され、共同教育研究施設から学内共同研究施設となることとなった。

      concept_fig1 fig.1 創生研究機構組織図

    3. 北大を特徴づける研究分野・研究テーマとしての位置づけ

      北海道大学研究戦略室は2011年3月に「北大を特徴づける研究分野及び研究テーマ」を全学で41件、抽出した。「実験社会科学」は、「世界レベルで見て北大に優位性のある研究分野」の一つとしてこの中に採択されている。具体的には、「重要な研究分野」として「実験社会科学」が、研究テーマとして「心の社会性に関する研究」(「心は集団環境における適応課題を解く道具群から成るシステムであるという観点から、心の設計を進化ゲームモデルと行動・生理・脳計測実験により明らかにし、社会科学の基盤となる人間像を提供する」)が選定されている。この「世界レベルで見て北大に優位性のある研究テーマ」には、2012年度分についても継続して選定された。

  5. 拠点間連携

    2010年6月、文部科学省は世界水準の研究拠点に集中的に資源投下するため、最先端研究基盤事業の補助対象事業として、「心の先端研究のための連携拠点(WISH: Web for the Integrated Studies of the Human Mind)構築」(以下WISH)など14件を選定した。本センターは、社会科学実験を行う連携拠点としてこのWISHの重要な一翼を担っている。さらに2014年3月には、心の先端研究を促進するための機器として、2012年度補正予算(施設整備費補助事業; 3億円)によって、MRI装置が導入された。WISHのメンバーである京都大学こころの未来研究センター及び東京大学進化認知科学研究センターに対しても、2011年度及び2012年度予算によって最新型のMRI装置が導入されており、WISHを構成する3機関が、脳画像解析研究を通して連携するための基盤が整えられた。北海道大学において最先端研究基盤事業の連携拠点として採択されたのは、「社会科学実験研究センター」と、同じく創成研究機構に属する「人獣共通感染症リサーチセンター」の2施設のみである。

  6. 施設紹介

    社会科学実験研究センターは、北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟6階に、1)集団実験室、2)国際ネットワーク実験室、および3)感覚システム実験室を有している。これらの実験設備は、国内はもとより、国際的にも最高水準の社会科学実験施設であり、国内外から数多くの見学者を集めている。

    • 集団実験室

      16のパーティションつきデスクが設置され、他者の存在を意識しつつ行う集団内行動の実験に用いる。各デスクのパーティションの高さを変えることでプライバシーの程度を調整できる。また正面には大型スクリーンが設置されており、参加者全員に対し同時に実験の説明を行う必要のある実験が実施できる。また各デスクにはパソコンが設置されており、国際ネットワーク実験室ともネットワークで連結すると、合わせて32人まで同時に実験参加が可能である。

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      fig.2 集団実験室における実験実施の様子

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      fig.3 集団実験室模式図

    • 国際ネットワーク実験室

      実験参加者用の個室が16室用意され、参加者同士あるいは海外の実験室にいる参加者と、コンピューターネットワークを介して相互作用を行う実験に用いる(これまでの実施実績:日本・中国・台湾を連結した国際実験)。参加者用個室に加え、実験準備室が設置されている。これらの個室及び制御室にはコンピューターが配置されており、LANで接続されている。よってコンピューターを介したコミュニケーションや相互作用の実験が実施できる。個室は完全な防音を施していないため、他の参加者の存在を意識しつつ、かつ相手の顔や名前についての匿名性が保障された状態で実験を実施できる。

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      fig.4 国際ネットワーク実験室における日本・中国・台湾の国際実験:(左上)国際ネットワーク実験室における実験の様子,(右上)国際ネットワーク実験室模式図,(左下)中山大学(中国)の実験室,(右下)NTU(国立台湾大学)における実験の様子

    • 感覚システム実験室

      他の参加者と相互作用を行いながら、眼球運動、心拍数、皮膚反応などの感覚・生理データを計測し、行動と情動反応や注意の配分などとの関連を調べるための実験室が整備されている。2つの完全防音室と2つの簡易防音室、および実験のための準備室から構成されており、各実験室内にLANが設置されている。防音室には、眼球運動測定装置、参加者に実験刺激を提示しつつ実験の様子を録画できるプロンプター、心拍などの整理指標を測定する装置、実験実施と分析用コンピューターが配置され、外部の雑音に影響されやすい生理指標・認知指標を測定する実験から分析まで実施できる。

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      fig.5 感覚システム実験室における研究例(Murata, A., Saito, H., Schug, J., & Kameda, T., 2016):(左上)提示された実験刺激(左)と筋電位測定(右),(左中)測定値の分析,(左下)分析結果,(右)感覚システム実験室の模式図

北海道大学社会科学実験研究センター規定及び内規
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