亀田 達也
(北海道大学)
Democracy under uncertainty: Adaptive robustness of group decision-making beyond the voter's pradox




集団による意思決定は、どの人間社会においても幅広く見られる普遍的現象である。その適応基盤として、多くの知識が集積される結果、集団は個人と比べて優れた決定を下しやすいことが指摘されている。しかし、不確実状況下における集団の意思決定では、正確な知識の獲得行動(情報探索)や表出行動(投票)には個人的なコストがかかり、「投票者のパラドクス」という政治学の概念で総括されるようなフリーライダー問題を孕むことになる。発表では、フリーライダー問題があるにもかかわらず、多数決による集団意思決定は機能するのかどうかを検討したコンピュータ・シミュレーションと行動実験が報告された。シミュレーションでは、フリーライダー問題を孕んでいても、集団意思決定を採択する母集団内では、協力者と非協力者が共存するような混合均衡が一般的に成立することが示された。加えて、幅広いパラメタの範囲で、多数決はベストメンバーによる独裁(協力者の間で最も有能な個人の意思決定に常に従う)に比べ、より効率的な意思決定手段であることが示された。さらに、インタラクティブな集団による行動実験により、これらの命題の正しさが経験的に確認された。